カレーになりたい 181221

深夜になってもなかなか眠れないでいるのは、時差ボケのせいではない。
昨夜は夜中4時間のフライトで2時間しか眠れず、今朝、帰国後からずっと仕事が続いていた。明日の朝は早朝に新幹線に乗って大阪へ行く。でも、眠れない。眠れないのは、羽生さんが竜王位を失冠し、27年ぶりに無冠になったからだ。
羽生さんは、僕にとって将棋界におけるかけがえのないヒーローだ。昔も今も変わらない。その羽生さんが、ついに今日、無冠になった。羽生九段になった。いつかは来るんだろうと思っていたが受け入れがたい事態である。
雌雄を決する対局2日である今日は、仕事をしながらもずっと対局中継が気になっていた。午後のある段階、夕方に入る前の段階では、素人目に見ても劣勢で、勝ち目はない局面になっていた。谷川さんと中村さんによる解説は、厳かな通夜の現場にいるように落ち着いていた。将棋に関わる、または興味のある誰もが様々な感慨を持って夕方の時間を過ごしていたんだと思う。僕もどうしていいかわからず、ラボでまごまごとしてしまった。打合せに来ていた人に「ドラゴンズが優勝を逃したときのおじいちゃんを見ているようです」と言われ、まあそんなところに近いのかもしれないな、と思った。
とにかく、羽生さんは負けた。新竜王になった広瀬さん、強かったなぁ。中継を眺めているだけの僕が恐怖を感じるほどの強さだった。ああ、もう、無理なんだ、と何度も思った。
そんな中、最も意外で、最も心に残ったのは、やはり羽生さんの対局姿だ。あの劣勢の中、最後の1分になるまで持ち時間を費やして盤と向かいあっていた。途中から解説が通夜のようになったことからもわかる通り、もっと前の局面でプロなら誰もが「もう投げるしかない」という状況だったというのに。何かあるはずだ、と頭を働かせているのか、気持ちを整理しているのか、ここまでに至る指し手を振り返っているのか、羽生さんの心境は計り知れないけれど、とにかく、「まだ投了しないのか……」というほど長い間、羽生さんは、指し続けた。
「好きなものと向き合うというのはこういうことなんだよ」と教えてもらっているような気持ちになった。心が洗われるというのはこういう気持ちなんだろうと思った。子供みたいな表現だけれど、「羽生さんの姿勢に比べたら自分なんてまだまだだ」と思った。羽生さん、一生ついていきます。
きっと、近いうちにタイトル戦に出て、通算100期を達成してくれることと思う。期待して待ちたい。それにしても、将棋って、なんて面白いんだろう。今日は羽生さんと広瀬さんに感謝しよう。
 

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