カレーになりたい 181206

タクシーが全く捕まらず、
イライラしたのである。
約束の時間までにカレーをもっていかなくちゃいけない。
友人が経営する会社「ピースオブケイクス」のオフィス移転パーティ。
なんとか間に合って、会場へなだれ込む。
社長の加藤くんに会ったから「おめでとう」と言って、
ちょっとだけ立ち話。
「羽生さん、昨日勝ったからね、俺は機嫌がいいんだよ」
僕がそういうと、
「いやぁ、そうだよねぇ!」
と加藤くん。
「それにしても、最近、最終版でひっくり返されることが多いよね」
「もしかしたら、棋風の改造を試みてるのかもね」
なんてことを話す。
しばらくして、彼のプレゼンテーションを始まった。
最後の最後にスライドに、彼と一緒に作ったカレー本の書影が出る。
「水野さん、ちょっとこっち来てよ」
マイクを通して呼び出しがかかる。
コラコラ、聞いてないよ。
ちょっとだけ話して、カレーをふるまった。
100食以上持って行ったはずなのに、20分くらいで鍋が空になった。
やることがなくなって、会場のはじっこのほうをうろついてみる。
キラキラしている人たちばかりで、どうにも居場所がない。
みんな、“どこぞのなになにさん”ばかりなんだろうなぁ。
いつものことだ。
パーティの会場で僕は自分の居場所に困り、うろたえる。
帰ろうかな。
カレーもなくなったし、そそくさと身支度を始める。
ケイクスからニュースピクスに転職した僕の元担当が、
仕事でタブロイドを作っているという。
出がけにもらって、ビルを出た。
いやぁ、立派な素敵なオフィスだったなぁ。
フラフラとしながら、外苑前を歩く。
足は、「HENDRIX」へと向かっていた。
カラカラの喉をうるおそう。
カウンターに座り、ラフロイグのソーダ割とキャベツのジュージュー焼きという、
いつものメニューを頼む。
もらったタブロイドを開いたら、どこをめくっても、
ギラギラとした人ばかりが出てくる。
ペラペラとまるで外国語をしゃべるかのように難しいカタカナ言葉が飛び交う紙面。
いわゆる今を時めく事業家たちのオンパレードが
ワラワラと次から次へと登場する。
僕は文字を目で追うのだけれど、半分も頭に入ってこない。
難しすぎる。
ブロックチェーンって、なに!?
頭を切り替えて店主の若林さんと無駄話をして、
ヘラヘラとする。
心地よい。
それから、また、独りの時間が続く。
今日、正式に書籍化が決まったとある企画を頭に思い浮かべ、
さて、どんな内容の本にしようかな、とか
いやぁ、来春までは激務になるな、とか
そんなことを想像してみたりする。
メラメラと闘志がわいてきた。
これは僕にとっても新たな挑戦になりそうだ。
会計をすませて店を出る。
少しだけ酔ったようだ。
タラタラと街中を歩くと、
ユラユラと景色が揺れる。
ホラホラ、あの娘が笑ってる。
ホラホラ、雨が降りしきる。
だっけかな。
フィッシュマンズの曲が頭の中で鳴り響いた。
 

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