カレーになりたい 181203

少し前から「旅と映画とカレー」についての連載をしている。
ところが、この連載は自分が出した企画にちょっと無理があり、過去2本、ポルトガルとスリランカで記事を書いたが、苦しくて仕方がない。3本目の記事として、上海について書いた。
連載では必ず僕がその土地を訪れるときにお世話になるキーパーソンとその人がオススメしてくれる映画が登場する。今回は、上海と「ラストコーション」。記事にも書いたけれど、オススメされなかったら一生観ない自信のある映画だった。
今回も、苦しんだ。何度も「やめたい」と思う。具体的に「この連載、打ち切りにしませんか?」と打診をしようと思ったことが何度かある。それでも続けているのは、(おそらく企画としては成立していないけれど)こういうものに取り組むことが鍛錬になるかもしれない、と思っているからだ。
いまひとつ納得しきれていないものを世の中に出すことのやるせなさはある。時が経ち、連載が終わったあとに自分の中で作品として残るようなものにはなりえないだろうな、というさびしさもある。でも、振り返ったら「あれで鍛えられたなぁ」というものは残るかもしれないし、もっと言えば、弱音を吐かずに続けていれば、作品になる可能性もなくはない、と心の片隅で思っている。
とにかく、大変だ。
一応、記事が更新される前に、最終段階の原稿を登場人物に送ることにした。個人は特定されない形で書いているが、読んでもらっておこうと思ったからだ。記事に出てくる森さんは、長年、上海に住み、僕が上海に行ったときに何から何まですべてお世話になった編集者。そして、もう少しだけ具体的な話をしてしまうと、JALの機内誌で連載をしていたときの担当者でもある。彼女の編集能力はすごく、機内誌用に書いた僕の短い文章に対する校正は、素晴らしかった。編集者にはいろんなタイプがいるのだけれど、文章の校正能力(よりよくするための指摘)について、あそこまで僕が感心させられたのは、過去に数人ほどしかいない。そのくらい信用している人である。
ざっと原稿を読んでもらった結果、メールの返事が来た。
「すごい! よくまとめましたね」
メールの書き出しにそうあって、僕は半分ほっとし、残りの半分でがっかりした。「よくまとめた」だなんて、彼女にそんな風に書かれるということは、やっぱりあの文章はまだまだなんだろうなぁ、と。
仕方がない。あの連載の場は“道場”だと割り切って精進しよう。

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