カレーになりたい 181111

札幌最終日は、自主制作プロジェクト「LOVE SPICE」の取材をした。
話を聞かせてもらった「PULUPULU」の村上さんは、スープカレー第二世代のトップを走るパイオニアで、店は20年以上営業を続けている。印象に残ったのは、いまだにかなりの頻度で札幌を中心にカレーを食べ歩いているということだ。カレー店のシェフは仕込みなどで忙しく、他の店を食べ歩く余裕はあまりない。他の店のカレーに興味がないというタイプの人も多い。それなのに村上さんは、いまだにスープカレーの新店ができるとせっせと出かけていく。カレーが好きでたまらないからだ、という。
僕もカレーは好きだけれど、好きの中身が違うのかもしれない。昔は僕も精力的に食べ歩いた。でも、本当にここ5~6年、いや、7~8年ほどは食べ歩いていない。食べ歩きには本当に興味がなくなった。新しいカレー店に出会うことへの興味がなくなってしまったのだ。でも、カレー店のシェフに会い、シェフと話をするのはいまだに好きだ。会いに行きたい人がいればカレー店に足を運ぶことはあるけれど、誤解を恐れずに言えば、その店のカレーにはほとんど何も期待していない。食べずに帰ってもいいと思う。
新しいカレー店のカレーに出会うことへの興味はないけれど、新しいカレーに出会うことの興味はある。それは自分でせっせと作ればいい、からかもしれない。カレー作りの実力がついてくると、カレー店へ行くモチベーションは薄れてしまう。それは、カレー店のシェフよりも自分のほうが上手になったということではなく、自分の食べたい味わいを最も忠実に再現できるスキルがついたということだ。だから、どこかへ行くよりも自分で作ったほうが満足できる。
自分ではどうしても作らないようなタイプのカレーを食べたくなったら足を運ぶけれど、そういう店は、東京都内でも10店に満たない。逆に札幌に行ったらスープカレーは自分で作らないから、どこへ行っても楽しみに味わうことになる。ともかく、カレーを食べ歩くということを長いことしていない僕からすれば、店の営業で忙しい中、せっせとあちこちへと足を運ぶ村上さんのモチベーションに感服した。
とはいえ、村上さんだって、相当なキャリアと実力の持ち主なんだから、新店の味に満足できるケースは年を追うごとに減っていくだろう。ちょっと意地悪だけれど、そのことをストレートに聞いてみた。そんな状況でも前を向いて食べ歩けるのはどうしてなのか? と。
「100軒いって1軒おいしかったらラッキーじゃない?」
満面の笑みで村上さんはそう言った。僕は完全に降参してしまった。あんな風にカレーを好きでいられるのはすごいことだ。僕は僕のやり方で村上さんと同じようにカレーに情熱を傾け続けていたいと思った。
 

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