カレーになりたい 181109

前から一度行ってみたいな、と思っていたところに来れた。
ニッカウィスキーの余市蒸留所。創業者である竹鶴さんの話は本で読んだことがあるが、話題になった「マッサン」とかいうテレビドラマ?は見ていない。ウィスキーは大好きだが、スコットランドのシングルモルトしか飲まないと決めているので、日本のウィスキーが今や世界に誇るおいしさに成長していると言われても、積極的に飲みたいとも思わない。
それでもここに来たかったのは、ウィスキーの蒸留所というものがどういうものなのかを見てみたかったからだ。かつて、アイルランドにあるジェイムソンの蒸留所へ行ったのも刺激的で楽しかったから、ニッカの蒸留所にも興味が沸いた。いつかスコットランドの蒸留所を回りたいと思っているから、その“本番”に向けての勉強のつもりでもあった。一番印象に残ったのは、想像以上に広かったということと、建物や敷地内のつくりもの、雰囲気などにセンスがあるということ。竹鶴さんの持つセンスがちりばめられていて、ステキだった。
一応、説明ツアーのようなものを申し込んで、1時間近くかけて所内をめぐった。20人くらいの観光客たちと一緒に真っ赤な衣装を着た女性スタッフの説明を聞きながらついてまわる。ウィスキーの製造工程はだいたい頭に入っているから、半分は話を聞いたり景色や建物を眺めたりしながらも、もう半分は別のことを考えていた。
こういう場所って、カレーの世界にはないよなぁ、と。素敵な敷地でわかりやすい解説を聞きながら魅力を噛みしめられるような場所。ウィスキーメーカーのニッカがやっているのだから、カレーの世界だって、お金をたくさん持っているカレーメーカーがやるべきなんじゃないかな、とボンヤリ思った。1時間の案内を聞いて回ったら確実にウィスキーに興味が沸くし、ニッカのファンになる。日本のウィスキーに興味のない僕ですら、ニッカが好きになったくらいだから。
ただ、一方で、カレーの世界にはこれをやろうとする人がいないだけではなく、やろうとしてもコンテンツが足りていないのかもしれない、とも思った。何をどう見せたらカレーやスパイスが魅力的に見えるのかがまだ練られていない。だから、やろうとする人が仮に現れてもこんなに人をひきつけるような場にはならないかもしれない。カレーの世界は常にコンテンツが足りていない。もっと開発が必要だ、と思った。
カレーが好きな人はたくさんいる。でも、カレーが好きな人が向いている先は、たいてい「おいしいカレーを作りたい」か「おいしいカレーを食べたい」に集約されてしまう。好きの中身が極めて狭くて、しかも嗜好性の高いものだから、最終的にみんながそれぞれの好みをぶつけ合って終了する。好みの近い人たちが固まってコミュニティを作り、目的を果たして満たされる。その先に新しいものは生まれにくい。
カレーが好きだという人の好きの中身がもっと多様化しなければ、スパイスやカレーの魅力は発見できないのだろう。ウィスキーの世界はいいな、と思った。蒸留所を歩きながら、いろんなポイントポイントで、「これをカレーでやったら」とか「これがスパイスだったら」とか頭をグルグルさせていたら、あっという間に見学ツアーは終わっていた。
札幌に戻り、スープカレー店のシェフたちと飲んだ。スープカレーは僕は大好きで、カレーの概念を広げた食べ物の筆頭だ。ここ札幌にいる間にもう少しヒントをつかみたいと思う。

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