カレーになりたい 181020

鳥取でのイベント「M響列車」が無事終了した。
素晴らしい体験だった。
打ち上げの席で、智頭急行の方と飲んだ。運転士出身で、今は、運転士の技術指導をされているという。智頭急行で働き始めて22年になるそうだ。電車の運転技術についての話がとても面白かった。
「運転の上手な人とそうじゃない人との差はどこにあるんですか?」
そう僕が聞くと、少しだけ困った顔をした。運転が上手かどうかということとは別の意味で、その運転士の性格やスタンスというものがあるから、答えるのは難しいそうだ。ダイヤに1分の遅れが生じているときに、次の駅に到着するまでにリカバーしようとする運転士と、1分遅れたままでいいから、安全で快適な運転を心がける運転士とは、その運転士の性格やスタンスによるから、一概にどちらが上手だとかどちらがいいとは言えないそうだ。
ひと駅の区間で1分間の遅れを取り戻そうとしたとき、ゆっくり駅を出発して次の駅にゆっくり停車すれば乗客は快適だ。でも、時間短縮のチャンスが最も大きいのは出るときと着くとき。ざっくり言えば、急に出て急に止まれば1分の短縮は可能になる。ダイヤは守れるが客の快適さが損なわれるという。
「じゃあ、ゆっくり出てゆっくり着く部分を守りつつ、間の運行中に客が気づかないように少しずつ速度を上げて1分間を短縮することもできますよね?」
「そうですね。それのできる運転士が技術的には優れていると言えるでしょうね」
もっと色々と話したが、とても興味深かった。カレー作りも同じだと思った。超腕利きのインド人シェフと肩を並べた経験を持つシェフに聞いたことがある。上手な人とそうでない人と、いったい何がどう違うのか? と。答えは、「細かいリカバーが上手だ」ということと「それを考える前に手が動いている」ということだった。
鍋の中はいつだって思うようにならない。異変に少しでも早く、少しでも多く気づき、細かくリカバーをできるシェフが本当に上手なシェフだと思う。たとえばそれをみんなの前でデモンストレーションしていても、見ている人たちは、誰も気づいていない。実は細かくリカバーしている、ということを。そして、その技術以上に、作る人の性格やスタンスがカレーの味に反映される。
どこの世界も同じなんだなぁ、と思った。

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