カレーになりたい 181001

LOVE INDIAのシェフたちが一堂に会した夜だった。
久しぶりの人がたくさんいて、色々話せて楽しく過ごせた。藤井さんと山登くんのコラボディナーもとてもおいしく、いい時間を過ごせた。会の後半にイベントLOVE INDIAの現状と今後について簡単な報告や情報共有があった後、各シェフや関係者が近況報告的なものをする時間があった。
増田さんがアルフォンソマンゴーの認証を取ったとか、沼尻さんがミールスイベントを立ち上げたら実施前からすごい反響があるとか、根本くんがデザインしたLOVE INDIAレトルトがパッケージデザインの賞を受賞したとか……。そんな景気のいい前向きな話が続く。僕は、その間、ずっとボーっとしていた。なんというか、「ふーん、そうなんだ、すごいことだな~」と頭の中では思っているのだけれど、自分とは別の自分が頭でそう捉えている感じで、身に入ってこない。全く悪い意味ではなく、興味の湧かない話だった。その流れで、「水野さんは? なんかないの?」と聞かれ、「いや、僕は何もありません」と答えた。答えながらも答えたのがなんとなく自分じゃないような気がしていた。
この感じはいったいなんなんだろう? と思う。
少なくとも僕には、みんなが賞賛したり感心したりするような「手柄」はないのだということがよくわかった。そして、そういうものに自分の気持ちが反応していないこともわかった。じゃあ、いったい、自分は何をしているというんだろうか。食事をしながら、スリランカ料理の話になり、スリランカ料理はなぜああいう構造になっているのか、とか、スリランカ料理はおいしいのかおいしくないのか、とか、そんな話に花が咲いた。僕も自分の意見がないわけではないけれど、なんとなく発言する気持ちに慣れず、ずっと黙って聞き役に徹していた。
あの感じはいったいなんなんだろう? と思う。
楽しい時間だったが、自分がそこにいないような感覚になる時間も過ごした。帰りの電車でなんとなくそのことを思い起こして考える。僕が嬉々としたのは3回あった。渡辺さんが最近ハマっているという競輪の話を聞いていたとき。諏訪内くんが、「将来、忍者になりたいんですよね」と言ったとき。加藤さんが、「私、麻婆豆腐をカレーじゃないと説明するのが難しいなと思ったんです」と唐突に言ったとき。
僕の気持ちは踊るように盛り上がり、声が高まり、興奮した。時間と場の空気が許すならもっとこれらのことについて話続けていたいと思った。
きっと僕は、圧倒的にモノよりもヒトに対して興味が沸くんだな。商品もイベントもデザイン賞も食文化の話もそれほど自分の心は動かない。でも、誰かがハマる競輪や誰かが憧れる忍者や誰かが悩む麻婆豆腐については心が動く。それは、それらを通して、その誰かという人間に強く惹かれたからに違いない。
みんなが賞賛するような「手柄」を立てた人よりも、みんながスルーしそうなささやかな「引っかかり」を手にしている人のほうに、僕のセンサーは反応するのだ。だったら僕自身もささやかな引っかかりを誰かに生み出せる人になりたいなと思った。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。


*

CAPTCHA


▲UP