カレーになりたい 180902

カレーとカレーのための器展は、まだ火曜まで続くのだけれど、一足先に東京に戻った。料理教室、座学、トークショー、ワークショップと怒涛の3日間だった。さすがにぐったり。しゃべり疲れて声も枯れた。イベント本番はいつも全力を尽くす。75分とか90分とか与えられた時間にわざわざ足を運んできてくれた人ができるだけ充実した体験をして帰ってもらえるために、できる限り考えられる限りのことをする。だから、終わった直後は床に突っ伏してじっとしていたいくらいの衝動に駆られるが、他にスタッフもいるし、休めるのはホテルの部屋の中だけだ。まあ、僕よりももっと長時間、働きっぱなしの人は山ほどいるだろう。会場に行けばカレー店さんがカレーを作って売り、レトルトカレーやスパイスを売り、器を売っている。
最初にこのイベントの話をいただいたときは、水野仁輔としてブースで1週間、ブースでカレーを作って販売してほしい、という打診だった。AIR SPICEの売り場もしっかり確保します、と。でも僕はどちらもお断りした。AIR SPICEはそもそもそういう場所で売る気はないし、カレーは、まあ、イベントへの出演だと思えばなくはないけれど、ライブクッキングなどのカリ~番長やカレー将軍がやっているようなことならまだしも、カレー店さんたちのようにブースでせっせとカレーを作って販売するということ自体、あまり僕が積極的にやりたいことではないからだ。
僕は僕のカレーをできるだけたくさんの人に食べてもらいたい、みたいな気持ちは薄いほうだし、カレーを作ったりスパイスを売ったりしてガッツリ商売したいという気持ちも極めて薄い。というか、ないと断言したいくらいだ。
カレーとカレーのための器展自体は、去年、信じられないほどの集客をして盛り上がり、その噂は東京にまで聞こえてくるほどだったから、商売をしたい人なら、大きなチャンスになるだろう。実際、自分の料理教室やらトークイベントやらの合間に会場へいくとすごいお客さんの数で活気に満ちているし、現場にいる関係者、知り合いの話を聞けば、100万売れた200万売れたなどと景気のいい話を聞く。そんな話を聞けば、「そんなに反響があるならカレーを出しておけばよかった」とか「スパイスを販売しておけばよかった」とか、少しでもそんな風に思うのが普通の感覚なんだろうか。僕は、ちっともそういう気持ちはわかない。生き生きとした表情で一所懸命カレーやスパイスを売っている現場の人たちを見て、「すごいなぁ」と感心したし、「僕の居場所じゃないなぁ」とも改めて思った。
カレーやスパイスでの出店はお断りした代わりに僕は、料理教室やワークショップ、トークなどを現場でしませんか? と提案した。去年スタートしたこの催事では、モノを売ることに徹して成功していただけに、企画担当者は、はじめはキョトンとした反応だった記憶がある。でも、何かしらの可能性を感じていたただいたのか、僕が提案したすべてをこの3日間で実施する手筈を整えてくれた。それはすごいことだと思う。僕の偏見かもしれないが、百貨店はスペース貸しをして稼ぎ、モノを売って稼ぐ商売だ。コトを売ったって、75分も90分もかけて雀の涙ほどの稼ぎしか得られないわけだから、費用対効果を考えるなら、そんな無駄なことは避けるのが賢明だろうと思う。水野が断るならそうそうに切り捨てて、別に話題性のありそうな人や店を口説いて出店してもらったほうが売り上げになる。
僕の提案は、まあ、そういう意味では的外れなものだったと思う。でも、実現してくれた。結果、僕自身は、本当に充実した3日間を過ごしたし、参加してくれたお客さんたちの満足度も高かったようだ。3日目の最後のワークショップが終わった後、会議室で企画担当者と2人になった。片づけをしながら「ちょっといくつか相談していいですか?」と彼が言う。彼が手帳を開き、僕はスパイスを整理しながら話をした。手帳には、2017年、2018年、2019年のカレーとカレーのための器展のコンセプトがメモ書きされている。モノだけを売って大成功した2017年、コトを売ることにトライした2018年、来年、この催事を引き続き盛り上げるために「コトを売る」の延長線上でどんなことをするのがいいのか? を彼は彼なりに考えていた。まだ、2018年の催事の途中だというのに。僕はこの3日間で現場を見てお客さんに接して自分なりに感じたことや新しいアイデアがあったからそれを話した。
それらの提案が形になるのなら、カレーを売ったりスパイスを売ったりする気は相変わらずないけれど、来年もこの催事に参加したい、と話した。彼は、アイデアに強く共感してくれたみたいで、来年の催事を予定しているスケジュールを僕に見せ、「ここの期間なんですよ」と言う。1年かけて準備すればとてもいいものができそうだ。最初に打診があったとき、にべもなく断ったにも関わらず、前例のないことに取り組む調整をしてくれたのは、彼のような独自の視点を持った心意気のある企画担当者がいてくれたからなんだろう。彼が担当する限り、僕は来年もこの催事に協力したいと思う。
100万、200万売り上げるのは他の出店者さんたちがすればいい。僕は、自分にしかできないことを探しながら、来年あの場所でまた出会えるかもしれない人たちに何か新鮮な体験の機会を創りたい。さて、また精進しなきゃな。
 

カレーになりたい 180902 への1件のフィードバック

  1. 成田妙子 のコメント:

    水野さんお疲れ様でした。今日は台風で最終日は無くなり早々切り上げてラッキーでしたね!
    商売っけないのですね笑、笑、
    座学の中で正体のわかっていないのは入れない❗共鳴しました。本当に美味しく、身体にいいカレーの普及に頑張って下さいね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。


*

CAPTCHA


▲UP