大阪に入った。
21時過ぎにホテルにチェックインし、まだ夜は時間があるのだけれど、なんとなく行きたい場所もなく、ホテルでPCを開き、Youtubeで将棋の番組を見る。
藤井猛九段という大好きな棋士が、自身の編み出した藤井システムの端攻めを解説する動画が面白い。視聴者の質問に答える形で、30分近くを使ってよどみなくさまざまなケースを解説する。めちゃくちゃわかりやすい。ほれぼれするような解説だ。
なるほど~! と心の中でなんども納得し、見続けていると、最後の最後に藤井さんは、「端攻めにどの順を選ぶかはケースバイケースです」と言う。あらゆるケースを解説しておきながら、ケースバイケースという曖昧な言葉で締めくくることに、すごく共感した。僕もよくそう言うことがある。カレーの作り方を解説するときに、何をどう加熱するか、どのタイミングで何を入れるかは片っ端から説明できる。でも、最終的にはケースバイケースなのだ。
要するに、鍋の中がAという状態になったら次はBという手法を取るけれど、A-2という状態になったらBではなく、B-2の手法を取ったほうがいい。鍋中がCになったらDにするけれど、いきなりDが出てしまったら、A-3にするかもしれない。どう出るかによって手法は変わる。
目の前に現れるケースごとに次のステップの解説はすべてできるけれど、どのステップを踏むべきかは、どう出たかによるから「ケースバイケース」となる。ところが、「ケースバイケースです」というところだけを受け止められると、「結論だしてよ」、「正解を教えてよ」と思われてしまう。それを避けたくて、困ることがよくある。詳しく知れば知るほど結論は出せなくなり、無口にならざるをえないのだ。
藤井さんの解説はまさにそれだと思った。そして、彼は、「ケースバイケースだ」と言い切った後に、こう付け加えた。
「しょうがないんですよ、将棋ってそういうもんだから」
すごいと思った。その言葉にホテルの部屋で独りドキドキして興奮した。カッコいい。かっこよすぎる。
「しょうがないんですよ、カレーってそういうもんだから」
言ってみたい!
藤井九段のあの言葉に僕が感銘を受け、納得してしまうのは、その手前のよどみない解説が、よどみなさすぎるほど見事だからだ。いいものを見た。すごいなぁ、ステキだなぁ。ああいう話を僕もできるようになりたい。明日からの3日間で7コマのワークショップやらトークショーやらがあるが、常に藤井九段の姿を頭の片隅に置いて頑張ろうと思う。

