カレーになりたい 180819

そういえば、大阪・梅田蔦屋書店でイベントをするときに、控室で面白い話を聞いた。料理書担当のスタッフが水野のカレー本を整理して並べていると、そこにある男性が現れ、「カレーでこういう活動を始めたのは、僕が元祖なんだよ」と言ったという。スタッフもいきなりお客さんにそう言われてびっくりしただろう。大阪でそういうセリフを言いそうなのは、僕も旧知の仲の◎◎さんだろうな、と思って名前を挙げてみると、やはりそうだった。
僕は、カレーの世界でどんな切り口で切ろうと元祖なんかではない。そう認識されたいとも思わないから、その彼が元祖でいいと思う。カレーの世界には、第一人者を自称している人もいるが、僕はどんな角度から見ても第一人者なんかじゃない。だから、第一人者はその人でいいと思う。
僕は二番煎じと呼ばれても構わないし、第二人者とか第三人者とか呼ばれても構わない。カレーの世界で僕は自分が欲しい称号はひとつもない。ちょっとしゃれが効いていておもしろいかも、と思って1年間だけ使っていたカレースターも、もう気持ちの上では返上している。(誰に返上?って話だけど)僕が自分からカレースターを肩書として名乗ることはもうない。誰か使いたい人がいたら使えばいいと思う。そもそも僕のものでもないし。
そういえば、東京カリ~番長に所属していたときも、番長を名乗りたければいつでもその人にこの名前はあげるんだけど、と思っていた。同じことだ。
某バーガーチェーンでカレーライスを出すイベントをしたのがきっかけで、そのカレーが好評だったから、特定のある店舗でイベント的に今後もカレーを出したい、という話があった。どういう条件でできますか? というような問合せだったけれど、レシピに著作権はないというし、僕のレシピは基本的にオープンソースだから自由に使えばいい、と思う。
僕はこの件についてお金が欲しいとも思わないから、承諾した。承諾した上に、「カレースターのカレー」とかは言っちゃっていいんじゃないですか? 誰も商標は取っていないみたいだし、と加えた。一応、水野仁輔の名前と顔は使わないでほしいとだけ念押しをして、大量調理で味わいを再現するときの注意点をたくさん伝えた。
僕はカレーの世界で欲しい称号はない。得たいポジションもない。僕よりもカレーをおいしく作る人、僕よりもカレーに詳しい人、僕よりもカレーを愛してやまない人、僕よりも先にカレーで何かを立ち上げた人はたくさんいる。そんな人ばっかりだ。僕はカレーのスペシャリストでもなく、専門家でもなく研究家でもない。僕はただ、カレーでやりたいことを黙々と(でもないか)続けている、カレーの人なのである。
このカレーの世界で、失うものは何もない。ただ、カレーという料理を奪われるのだけは避けたいかな。それを手放したくない、という気持ちをこれからもずっと持ち続けていたいとは思う。
 

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