カレーになりたい 180622

「矢倉は終わった」と、ある若手棋士が言って、将棋界ではちょっとした話題になっている。あ、矢倉というのは居飛車の戦法の一つである。重厚な将棋になりやすいからなのか、力戦急戦になりがちな最近の将棋界では勝ちにくく、もう終わった戦い方だ、という意味だ。
その発言に対して、僕の大好きな棋士、郷田真隆さんは言う。
「矢倉は終わってませんよ。戦型の流行は繰り返すことが多いし、なんといっても矢倉は将棋の基本ですから」
郷田さんがそう言ってくれて僕はうれしい。そうだそうだ、矢倉は終わっていない。だから、郷田さんが好きなんだよな。
今月発売の「月刊将棋世界」を読みながら、そう思った。
カレーの世界で流行っているのは何なんだろう? 自称「カレー界の郷田真隆(笑)」の僕は、そう流行とかに疎いけれど、スパイスカレーになるのかな。だとしたら「スパイスカレーは終わった」とか、そのうち誰かが言い出すのかもしれない。そのとき僕は誰にも聞こえないくらいに小さな声でブツブツと言うのだろう。
「スパイスカレーは終わってませんよ。なんといってもスパイスカレーはカレーの基本ですから」
いやしかし、カレーの基本ってなんだろう?
成田空港で買った、今月発売の「月刊将棋世界」を読みながら、そう思った。
「棒銀(戦法)は終わった」と将棋界ではずいぶん前から言われている。それでも棒銀に執着して指し続ける棋士がいる。加藤一二三(ひふみん)さんだ。あるときそのことについて記者が質問したそうだ。
「なぜ(終わったと言われている)棒銀を指し続けるんですか?」
加藤さんが答えた言葉が名言と言われている。
「棒銀が弱いんじゃない。自分が弱いんです」
この言葉に強く心を打たれた。そんなエピソードを思い出す。いつかカレーという料理が世の中的に終わったと言われたとしたら、それでもカレーの活動をし続ける僕は、加藤さんのようにカレーのせいにせず、自分のせいにしなくちゃいけないな。
成田空港で買った、今月発売の「月刊将棋世界」を、ポルトガル行きの飛行機の中で読みながら、そう思った。
リスボンについた。

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