カレーになりたい 180116

チェティナード料理を食べたい。
錦糸町「ヴェヌス」を久しぶりに訪れて、シェフのヴェヌゴパールさんにそう直談判することにした。ランチタイムに行くと、彼はいない。店にいた別のシェフやスタッフに「ヴェヌゴパールさんは?」と聞くと、「今、上で休んでる」とのこと。「呼んでほしーなー」と言うと、渋った。「寝てるかもしれないから」とのこと。
ま、そりゃそうだろう。従業員が休んでいるオーナーを呼び出すなんて、なかなかできないだろうから。電話番号を教えてもらう。夕方5時に店に出るから5時以降に電話をしてくれとお願いされたのだけれど、どうしても直接会ってお話したかった。「ヴェヌス」のランチはブッフェで、僕は特にお腹が減っていたわけじゃなかったから、控えめにふたくちずつ4種のカレーを盛り合わせてさっと食べ、会計を済ませた。店を出てすぐ、スタッフからの言いつけを破ってヴェヌゴパールさんに電話する。
「アー! ミズノさん!」
電話の向こうで弾んだ声がしてホッとした。
すぐに店に降りてきてくれて、僕らは握手をかわし、久しぶりにお話した。この2月にチェティナードに行く。チェティナード料理とはなにかを探りたいのだけれど、自分はチェティナード料理について何も知らない。店のメニューにチェティナードマトンなどがあることはわかっているけれど、メニューにはない特別なチェティナード料理のフルコースを作ってほしい。
そう伝えた。
ヴェヌゴパールさんは、オーケーといった調子で首を斜めにかしげ、その場でメモ帳にスラスラとメニューを書き始めた。
「7~8人で来ようと思っているのだけれど、何人までOK?」と聞くと、彼は、予約ノートを確認し、「何人でもオッケー」と優しく微笑んでくれた。
「ここ、何人まで入る?」
「20人、オッケー」
「じゃ、20人でいい?」
またヴェヌゴパールさんは、「問題ないよ」といった調子で首を斜めに傾けた。
さて、誰を誘おうかな。
この夜にもしかして「ヴェヌス」で食事をしたいと思っている誰かには、ちょっと申し訳ないことをしたな、と思ったけれど、ヴェヌゴパールさんや調理場のシェフたちもその夜は貸し切りパーティにして、チェティナード料理のみを仕込みしてくれたほうがやりやすいだろう、と思ったのだ。
(まあ、勝手な解釈ではあるけれど)
かくして、チェティナードの夜は予約完了した。
「ありがとう」と言って、僕が店を去ろうとすると、ヴェヌゴパールさんが、「お昼たべた?」と聞く。
「食べたよ」
「なにを?」
「なにをって、ここのランチを」
ランチタイムはブッフェ以外のメニューはない。当たり前の答えだったのだけれど、僕がそう言うとヴェヌゴパールさんは、心配そうにブッフェの4種のカレーが入った鍋をのぞきにいき、「だいじょうぶ?」と一言。
「美味しかったです」と答えた。
大丈夫? と彼が言ったのは、僕へのやさしさなんだろうなぁ、とまた僕は勝手な解釈をした。だって、大丈夫に決まってるんだから。チェティナードの夜、楽しみだ。

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