カレーになりたい 180102

静岡のAIR SPICE FACTORYに来て、1週間が経とうとしている。
ま、ファクトリーとかなんとか言って、実家なんだけど。
毎日2~3種類のカレーを作り続け、これまで10数種類のレシピをトライアルした。うまいのもあればうまくないのもある。作り続けていて気付いたことがある。自分は、自分が決めた規制に縛られておいしく作ろうとする行為を制限しているんだよなぁ、と。カレーを食べて人がおいしいと思うエッセンスというのはたくさんあって、それらを僕は結構たくさん知っている。あれを入れたりこれをやったりするとカレーはおいしくなるんだよな、というやつなんだけど、それをできるだけ避けたいと思っているのだ。
それをやってみんながおいしいというのは当たり前なんだから、それはやらないでおこう、と。誰かがそうやって美味しいカレーを作っているのはとってもいいと思う。ただ、僕はできるだけやらないことにしている、というだけだ。毎日試作を繰り返していると、どうしても、その美味しいカレーエッセンスが僕の頭の中で顔をのぞかせてくる。いかんいかん、と僕はそれを振り切ってレシピを組み立て、買い物へ行く。
たとえば、わかりやすい例でいえば、油だ。油は簡単に言えば、多ければ多いほどおいしくなると言ってもいい。だから、油をたくさん使うカレーは、できるだけ作らない。ヘルシー志向なわけではない。それに頼っちゃおしまいよ、と思っているだけだ。でも、昨日(だったかな)、4人分で油を200ml使うレシピを作ってみた。案の定、信じられないくらいうまいカレーになった。
別に仕上がりに油っぽいしつこさを感じるわけではない。食べながら思う。これはこれでいいのかもしれないな。僕が僕の決めた規制に縛られているのは、自己満足なのかもしれない。あれやこれに頼らないというのは自分で格好つけているだけで、別にまわりの人たちは僕のそんなストイックな行為に付き合っているほど暇ではないだろう。
ま、こういう自虐行為は自分のクセみたいなもんでもあるし、趣味みたいなもんでもあるから、全くやめるわけにもいかないだろうけれど、「うまけれいいじゃん」みたいなレシピもたまには挟んでみようかな、と思う。……と、まあ、そんなことも思いながら試作を続けている。
ただね、僕はカレー店のシェフじゃないから、やっぱり、「うまけりゃいいじゃん」だけでは楽しくないんだな。「カレーがうまいっていうのはどういうことなんだろう」ってことを表現したい。おいしいカレーを作るためのエッセンスが大きく10個あるとして、AさんとBさんとCさんさんが好きなエッセンスはきっとそれぞれ違う。僕は10個を提示することはできるけれど、10個がAさんにもBさんにもCさんにも共通するものとして提示することはできない。だから、AさんはAさんの、BさんはBさんの、CさんはCさんの自分自身のおいしいエッセンスが何なのかを理解することが最も大切なことだと思う。それを知るための手引きを提示できたら面白いだろうなぁ。カレーの問診票みたいな。
自分の好みを知るということは、実は、おいしいカレーにたどり着くための一番の近道なのだから。あ、問診票で思い出した。僕が大学時代に本当に音楽が好きになったキッカケは、バイト先の先輩が音楽の問診票を作ってくれたことだった。そうそう、懐かしいな。あれで僕は自分の好みがわかった。その後は、好きな音楽を追求する一人旅に出ることができた。あのときの話はいつかどこかで書くことにしよう。
毎日せっせと試作しているカレーのレシピが、どこかの誰かの問診票になるためには、なにかアウトプットに工夫が必要だ。考えなくちゃ。

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