カレーになりたい 171125

取材に答えて懸命に考えを伝えようとしていると、ふと、自分と向き合っているような感覚になることがある。
目の前の相手に説明したいのではなく、自分自身を説得しようとしているような。
「水野さんが自身のカレー活動で他の誰とも違うと自覚していることはなんですか?」
「その源泉はどこからきているのですか?」
滅茶苦茶な難題を出されたおかげで、そんなことになってしまった。カレーの調理という分野で言えば、僕は、ゴールデンルールを発表してスパイスで作るカレーの基礎を確立(?)し、システムカレー学を発表して、その応用方法を提案した。その他にカレー調理に関する素朴な疑問を挙げられるだけ挙げては自分なりに分析し、自分なりの答えを見つけては世の中に検討課題を投げている。基礎と応用と課題。すべては、おいしいカレーを構築するための作業をやってきたことになる。そこでふと思った。そんなに築き上げてばかりいていいんだろうか、と。このままこれを続けていたら、自分の築いたものの上でしか考えられなくなってしまうんじゃないか。鉄骨を組み立てて上へ上へと伸ばしていき、そこに立てば居心地はいい。基礎工事はぬかりにからビルが崩れることはないだろうし、応用も効くから外から見てもそこそこユニークな建物には見えるだろう。高いところに立てば見晴らしがよく、色んなものに気づけるから、新しい課題も見えてくる。疑問に思うことや提案したいことも声を大にすればそれなりの人には届くのかもしれない。でも、そこにずっといたら、身動きが取れない。高いビルの上に入るけれど、横に移動しようとしたら50メートルも歩くことはできないだろう。
構築するということはとても前向きで進歩しているイメージはあるけれど、一方で自分を窮屈にしていく作業なのかもしれないと思った。もちろん、取材の最中にそんなことを考え始めたら会話にならなくなるから、取材を終えて街を歩きながら悶々とそんなことを考えてみる。構築とは正反対のことをしなきゃダメなのかもしれないな。なんだろう。破壊、かな。築き上げたものを壊す。自分のカレー活動には、“破壊”のエッセンスが足りないのかもしれない。見たことのないようなビルを建てることに一生懸命になっていたけれど、そのビルを壊さなければ別のビルを建てることはできないのだから。
破壊はアイデアの源泉になる。え~? カレー作るのにそんなことしちゃうの!? みたいな斬新なアイデアを生むためには、作っては壊すをもっと繰り返さなきゃ。釣りでいうキャッチ&リリースみたいなことなのかもな。そんなに時間をかけて頭をひねって苦労して釣ったのに、逃がすの!? みたいな。釣った魚を食べたいわけじゃない。釣れるか釣れないかの駆け引きに楽しみがある。カレーで構築したものの上に乗っかっていい景色をみたいわけじゃない。構築したかと思えば壊す。また築くことが楽しいはずだ。
「あれ? ここにビルあったよね」
とか、
「あのビル、この前完成したかと思ったら、もう壊してるよ」
とか。
ゴールデンルールとシステムカレー学は存在する。次に考えるべきなのはカレーを破壊するための手法なのかもしれない。そろそろ年末だからな。来年の活動コンセプトは「破壊」としておこうかな。「破滅」でもいいけどね。「水野、2018年に入って突然おかしくなったね」みたいなね。

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