カレーになりたい 170923

イベント出張のため、浜松に来ている。車で浜松に来るのは、去年のイベント以来、1年ぶりだ。3時間30分、ノンストップのドライブ。僕は車にもドライブにも興味がないから、できることなら新幹線に乗りたいのだけれど。リーダーが助手席にいるが、リーダーとは、つい最近、ポッドキャストラジオ番組「M響アワー」の収録で3時間以上しゃべっているから、別に何か話したいことがあるわけでもない。そんなわけだから、往復7時間という時間がもったいないなぁ、と思ってしまう。これが新幹線なら原稿を書いたり本を読んだりできるのだけれど。独りなら落語を聞いたり音楽を聴いたりできるのだけれど(笑)。
ま、ともかく、浜松についた。本番は明日。仕込みをすることになっている場所でスタッフと待ち合わせる。16時から仕込んで19時に本番を迎えることになっている。3時間で250人分のカレーを作る。それを想定して、なんとなくレシピを頭の中で組んである。さて、スタッフと待ち合わせて時間について確認。
「16時から仕込めるんですよね?」
「いや、16時30分、だと思います」
「え?」
この30分の差はでかい。一緒に現場に向かい、仕込み場所の担当者に挨拶。
「16時30分からですよね? お世話になります」
「いや、この場所が使えるのは、17時からですね」
「え?」
30分が1時間にのびた。この1時間の差はでかい。でも、まあ、仕方がない。僕たちは、17時からの2時間で250人分のカレーを作ることになったのだ。しかも、熱源は、家庭用のIHクッキングヒーターが2台のみ。さて、と。なかなかのハードルが設定された。レシピは組み立てなおさなきゃいけない。
僕は予定調和が隙じゃないから、こういう現場でのハプニングがあると、楽しくなってきてしまう。30分や1時間の差がでかい理由は、その時間でかなりのことを進行させられるからだ。すなわち、その時間が削られれば、かなりのことができなくなる。10分でも20分でも長く調理時間があるということが、どれだけ大事なことなのかを伝えるのは、とても難しい。リーダーと僕の2人は同じレベルで実感していることなのだけれど。
突然、制限が増えたわけだから、当初予定していたのと同じ味のカレーを作るのは不可能と言っていい。でも、当初予定していたのと同じおいしさのカレーを作ることは可能だ。そのために、一度組み立てたレシピを分解して再構築する。これは、僕の趣味でもあり、特技でもある。「二度と同じカレーを作らない」というモットーで、18年間、出張料理をし続けてきたわけだから。
こういう風に現場で直前に予期せぬことが起きた時、僕はいつも「あ、そうですか、全然大丈夫っすよ」みたいなリアクションをしているのだけれど、それは、本当にその通りだからそうしているわけだし、なんなら楽しみが増えてアドレナリンが出ている、みたいな状態だからそうしているわけだ。
つくづく自虐的な体質だ。新幹線に乗れなくて車を運転しなきゃいけない苦労は、「面倒だな」と思うくせに、2時間で250人分のカレーを作らなきゃいけない苦労は「楽しくなってきたな」と思ってしまう。なんだろうな、これ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。


*

CAPTCHA


▲UP