カレーになりたい 170916

僕は新幹線の中で原稿が書けない。昔から薄々それは気づいていた。今年の前半は、膨大な原稿の締め切りに追われていたから、あそこやそこで書けないだなんて言っている余裕はなく、どこだろうがかしこだろうが、新幹線の中でも飛行機の中でも書きまくった。でも、本当は書けない。酔うのだ。
ある連載原稿を書く予定で金沢行きの新幹線に乗った。が、どうしてもパソコンを開く気になれず、将棋の本に逃げた。谷川浩司さんの新書。読み終わったら金沢についた。本を読むのは心地よい。金沢からの帰りにまた原稿を、と思ったが、今度は羽生善治さんの文庫に逃げた。読み終わったら東京駅についた。将棋の本を読むのはなんとも豊かな時間つぶしになる。
というわけで、連載原稿はまだ書いていない。週明けまでに出すことになっているから、そろそろちゃんと書きはじめなければならない。次は気仙沼に向かうことになっている。東京駅から仙台駅まで新幹線に乗る。よし、そこで書こう。書けないとわかっているのに書こうという気持ちだけは持っている。でもきっと書けないのだ。カバンには、立川志の輔さんの文庫をしのばせた。気仙沼に行ったら、「さんま寄席」で志の輔さんの高座を聞けることになっているからだ。
書かないよね、原稿、新幹線で。きっと帰りの新幹線でも志の輔さんの別の本でも買って読むだろうね。じゃ、いつ書くのかな、カレーの原稿は……。

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