カレーになりたい 170915

スパイスボトルを乗せたターンテーブルが回り始め、オープニングパーティで訪れたたくさんの人が思い思いにスパイスをブレンドし始めた。困っていそうな人を見つけては僕が声をかけてアドバイスする。誰もが純粋にスパイスの香りとブレンディングを楽しんでいる。平和な空間と時間だった。個展の始まりの始まりという段階なのにすごく満ち足りた気分の僕は、普段飲まないビールに辛口のジンジャーエールを混ぜながらごくごく飲んだ。パーティを後にし、スタッフや関係者と一緒に打ち上げへ。15人ほどのメンバーでシンガポール料理店で紹興酒のソーダ割とロックを交互に飲み続け、2次会でワインバーに行って赤ワインを飲み、店を出たのが、深夜の1時50分だった。
ホテルへのタクシーを探そうとすると、思わぬ展開に。一緒に会場設営をしたスタッフの一人が、大きな声で叫んだ。
「スリランカカレー食べに行きましょう!」
え!? ここからまだ行くの? ワインバーでは疲れ果てて寝ている人もいたというのに。気持ちだけは盛り上がっている僕たちは、深夜3時までやっているというスリランカ料理店へぞろぞろと歩く。席についてあれこれとカレーを頼む。僕はブラックカレーにライスというセットで食べた。そこにちょっとした事件が。誰かが頼んだスリランカスープカレーなるものが回ってきたから、スプーンにすくってひと口だけ。直後から強烈な辛みが脳天を突き刺し、体中を駆け巡る。信じられないほど辛いのだ。意味がないことをわかっていながら水をゴクゴクと飲み干すが、やはり、口の中から水が消えた直後から辛みが舞い戻ってくる。軽く寒気がし始め、その後に戻った僕のブラックカレーも味わがわからなくなるほど辛く感じてしまう。
「辛い! 痛い! 辛い! 痛い!」と繰り返しながら我慢して食べたが、ほとんど拷問のようなスリランカカレー体験となった。その場にいる全員が味見をして全員がノックアウトされた。誰かがこぼした。
「いい夏の思い出になったね」
店を出るときになんとか力を振り絞って「ご馳走様でした」と告げる。カウンターキッチンに並ぶスリランカ人シェフたち数名が晴れやかな顔で送り出してくれた。ホテルへのタクシーに乗りながら思った。そういえば、僕は金沢にいるのである。シンガポール料理、ワインバー、スリランカ料理。金沢の夜のチョイスとしては滅茶滅茶だと言っていい。
寿司が食べたい。
寿司が食べたい。
寿司が食べたい。

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