カレーになりたい 170814

とある雑誌の取材で、とあるカレー店に行き、とあるアイドルグループのとあるメンバーの方とカレー対談をした。アルファベット3文字のグループの女性だった。僕はテレビに出ている人たちをほとんど知らないため、名前を聞いても会っても何もわからないままだが、対談自体は楽しく終えた。
担当編集者と名刺交換した後、そのアイドルの女性も僕に何かを渡すそぶりを見せたので、「名刺交換するなんて珍しいな」と思いつつ、僕は名刺を差し出した。すると、彼女が名刺の代わりに僕に手渡ししたのは、チェキで撮った自分の写真。その上には「水野さんへ」で始まる感謝のひと言とサインが書かれていた。
僕は面喰ってしまった。彼女が10代後半くらいだろうか。おそらく、こうやって仕事で接点の会った人にチェキにメッセージを添えて渡すことにしているのだろう。事務所の方針なんだろうなとは思ったけれど、もしかしたら、彼女自身がそうしようと決めていることかもしれない。どんな理由にしろ、僕は、それをもらって嬉しかった。
会うまでは(失礼なことに)顔も名前も知らないアイドルだったのに、こんな些細なことで嬉しい気持ちが沸くんだな。そうか、ファンサービスというのはこういうことなのかもしれない、と思った。
その体験が、すぐに活きることになる。午前中に取材を終え、午後からは、書店周りをする予定だった。『幻の黒船カレーを追え』の担当編集者と8店を回る。新宿からスタートして、池袋、有楽町、丸の内、神保町。書店員さんに挨拶をして、サイン本を書き、ミニ色紙にメッセージを書いて回る。みんなが水野に興味を持ってくれているとは限らない。それでも、実際に顔を見て話をして、メッセージを残すことは、書店員さんにささやかな関心や喜びを残すことになるかもしれないのだ。
だから、僕は、できるだけ心を込めてサインやメッセージを書いた。書店周り自体は初めてのことではないけれど、新鮮な気持ちで回ることができたのは午前中の体験があったからだと思う。10代のアイドルから学んだ大事なことである。
次に書店を回るときは、チェキを持ち歩こうかな。要らないね、43歳のおっさんの生写真は……。

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