バー ヘルムズデールで、2日連続ポークカレーを食べた。この時期は、軽井沢店にいるはずのオーナー、村澤さんが初日はお店にいらっしゃって、久しぶりに話す。ポークカレーを出してくれる時にこう言った。
「いま使っているカレー粉の扱い方がようやくわかってきたんですよ」
扱い方と言ったような記憶があるけれど、”向き合い方”みたいなニュアンスだったような気もする。ともかく、わかるな~、その感じ、と思った。それから控えめにこうも付け加えた。
「このカレーは僕でないと作れないんですよ。僕以外のスタッフでは微妙な加減がね……」
これも、わかるな~、と思った。しかも、この微妙な加減というものは、紙に書いたレシピでは表現できない。付きっ切りで教えたとしても相手がよっぽどセンスのいい人でない限り、簡単に伝授できるものではない。
作り手の癖みたいなものも味に反映されるから、結局、その人が作らないとその人の味にはならないのだ。でも、今、僕は、全く逆のことに関心がある。
誰が作っても同じようにおいしくなるレシピにこそ、価値があるんじゃないかと思っているのだ。すなわち、お店のようなカレーが自宅で作れるレシピ。レシピ本で提案するレシピは、家庭で作りやすいものにアレンジした簡易版カレーであることが多い。そうじゃなくても、お店で食べられる、妥協のないカレーを全国の家庭で作ってもらうことはできないだろうか、と思っているのだ。
具体的にそれに取り組んでいるのが、フードトラック「カレーの車」だ。定番カレーであるチキンスパイスカレーの「オレンジ&フェンネル」と「レモン&セロリシード」は、いったん、僕自身が、「僕にしか作れないおいしいカレー」を開発した。それを毎回、仕込みながら、「誰にでも再現できるおいしいカレー」にするために調理プロセスを整理している。妥協しないが簡略化したり、ブレの出にくい方法に変換したり、という作業をしているのだ。
レシピは、グラム単位でネットでまもなく公開される予定となっている。それだけではない。動画も撮影して公開したいと思っている。あの人にしか作れないはずのカレーを自分も作ることができる。そんな喜びがいつか届けばいいなぁ。

