カレーになりたい 170707

フードトラック「カレーの車」で出かけた青山で、すごく嬉しいお客さんたちに出会った。
目の前のお客さんの注文に応えてカレーを盛りつけていると、車の角に立てかけた看板を見ている男子1人と女子4人ほどのお客さんがちらっと目に入った。年のころは20代前半という感じ。みんな適度にお洒落なファッションに身を包み、男子はかっこよく女子は美人ぞろい。ま、ちらっと目に入った程度の認識だったから、正確にはわからない。ともかく、彼女らはたまたま通りかかったようなお客さんのようだ。
至近距離で会話が耳に入る。
「カレー屋さんだよ」
「あ、水野さんの店だ」
「は? 水野って誰?」
「え~、知らないの~? カレーで一番有名な人だよ」
「そ~なんだ~」
「あ! 本人がいる!」
「カレー頼もうよ」
「2種類あるよ。オレンジとレモンだって」
「フェンネル? フェンネルってなに?」
「セロリシード? 全然わからない」
「すみません~、このカレー、辛くないんですか?」
「あ、どちらも辛みはないように作ってますよ」
「なんで? スパイスって書いてあるのに!?」
「スパイスの香りは豊かですけど、辛くはないんです」
「意味わかんない~。で、どういう味なんですか?」
「レモンはココナッツミルクでまろやかな感じ。オレンジの方は白湯スープを使ってるので適度に濃厚なうま味があります」
「まじ~!? おいしそ~!」
なんとも奔放な女子たちである。新人類とかいうのかな。テンションはやたらと高いし、会話のテンポが速すぎてついていくのが精いっぱい。それぞれに注文するカレーを決め、カレーを受け取る。
「この容器、おしゃれ~!」
「カレーが別の器になってるのもい~ね~」
「お~、ありがとうございます。この容器を見つけるまで僕ら、相当あれこれ探して悩んだんですよ。容器をほめてもらうの、うれしいな~」
「あ~、そうなんだ~。お洒落ですよ。このビニール袋もおしゃれ~」
「いや、それは、普通の袋だけど……」
「ありがとうございました~」
怒涛のごとく去って行った。
服装や雰囲気から、モデルさんとかファッション関係の人とか、もしくは、AVEXの裏だから音楽関係者とか、とにかくそんな業界の人なのかな~という印象。ひとりだけ、僕のことを知ってくれている人がいたようだけれど、みんな若いし、スパイスやカレーなんかに普段は全く興味のない世界にいる感じだった。
車に残された僕はあっけに取られたけど、その後、しみじみと思った。ああ、僕がカレーを届けたい人たちは、きっとああいう人たちなんだろうなぁ。普段、スパイスやカレーなんてものに何の興味も示さず生活している人たち。そんな人たちがほんの少しでも立ち止まって関心を持ってくれるようなアウトプットをこれからもしていきたいと改めて思った。
いい経験したなぁ、今日は。

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