カレーになりたい 170706

いろんな形の取材を受けるけれど、なかでもちょっと苦手なタイプの取材がある。若い人や後輩へのメッセージ的なものを求められる取材だ。明治大学から取材依頼があり、受けた。メディアは学生が読む大学のサイト。大学広報が仕切り、現役の大学4年生がインタビュアーになって、僕の今の仕事やこれまでの経緯などの質問が飛ぶ。まあ、この手のことはいつも聞かれる内容だから、なんともない。問題は最後にやってきた。
「いまの大学生に対して何かメッセージをお願いします」
僕は、一応、明治大学の卒業生である。大学OBとして、後輩に何か熱いことを語ってほしいということなのだろう。これが困る。本当に困る。語れることは正直言って、何もない。そもそも取材の途中から、困ったな、という気持ちが出始めた。
「なぜ明治大学を選ばれたんですか? 大学時代はどんなことをしていましたか? ゼミでは何を学びましたか?」
こんな調子で自分の大学生活に対する質問が続いたのだけれど、大学側が期待しているような回答はできない。だって、僕が明治大学に行ったのはそこしか受からなかったからだし、かといって特別行きたい大学があったわけでもない。入学式も面倒だから行ってないし、授業はほとんど出てないし、ゼミも顔を出さないから教授から「あいつは除ゼミだな」なんて冗談半分で言われた身分だし。
そもそも愛校心というものがない(笑)。ラグビーや駅伝で明治大学が活躍しようとしまいと別になんとも思わないし(笑)。
学生時代に打ち込んだことはいくつかあったけれど、明治大学に通っていたこととは関係がない。大学4年間という時間は貴重だったとは思うけれど、一方で、大学なんて行かなくてもよかったな、とか大学なんてどこでも変わらないな、とかも思っている。
要するに全くお手本にならないダメ先輩なわけで、その後、卒業後の僕の人生もろくでもない。今の大学生のほうがよっぽど楽しく学生時代を謳歌し、立派な会社に入って仕事をしていくのだろう。
ああ、困った。本当に話すことがない。じゃあ、そんな取材は受けなければよかったのにとも思うのだけれど、歳のせいか、母校のためとか故郷のため、みたいな気持ちが昔よりも強くなっているから、何か自分にできることがあったら……という中途半端な姿勢だけはある。取材中も、困ったなと思いつつ、この状況で、目の前にいる大学生や広報の方のためにできるだけ何かしてあげたい、という気持ちがあるから、余計に焦る。
こういうふうになってしまう僕のことを「水野さんは、サービス精神がありすぎる」と指摘してくれた人がいたけれど、本当にそうなのかもしれない。
いずれにしても、大学の後輩に僕から伝えられるメッセージなんてひとつもない。結果、「やりたいことをやればいい」的な中途半端なメッセージをしゃべったような気がする。だって、もし僕が血気盛んな大学生の立場だったら、「卒業生の説教なんて聞きたくねえよ」とおもっていたに違いないから。
まあ、そうは言っても、1人や2人でもいいから、琴線に触れてくれる人がいるとしたら、それでよしとしようかな。あ~、疲れた。

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