カレーになりたい 170630

フードトラック「カレーの車」で初めて南青山に出店した。たくさんのお客さんに来てもらい、11時の開店直後から行列ができて、13時前に売り切れてしまった。その後も訪れてくださったお客さんたちに本当に申し訳ないことをした、と思う。
こういう気持ちは、結構ひきずる。イベントや教室なんかでもそうだ。定員を超える応募があって、抽選で誰かをお断りしなければならないときは、どことなく悪いことをしているような気持ちになる。集客に困って、なんとかひとりでも多く来てくれないだろうか、とソワソワするイベントのほうが、本当は幸せなのかもしれない。
そう、きっと僕は満たされているよりも、足りないほうがいいのだ。
カレーの車で出しているカレーの味についても同じことを思う。チキンスパイスカレーの「オレンジ & フェンネル」と「レモン & セロリシード」の2種のカレーを出した。レモンのほうはイメージ通りの仕上がり。でも、オレンジの方は、おいしくなりすぎてしまった。おいしくしすぎたくない、と思っている。ちょっとだけもの足りないな、というくらいの味が理想形だと思って作っている。
でも、今日のオレンジカレーはうますぎた。鶏肉の量も多すぎた。あの味ではいけない。もうすこし具が乏しくてサラッとしていて、食べている途中は、「まあまあかな」くらいの印象を持ってもらって、全部食べ終わって店を後にし、会社への道や駅への道の途中で、「おいしかったかも……」と頭をよぎり、翌日になって、「ああ、やっぱりおいしかったな」、翌週になって、「あれをもう一度食べたくて仕方ない!」となるようなカレーが理想形だといつも思っている。おそれを目指している。
でも、今日のカレーは、満たされた味だった。
食べていただいた方から絶賛の声をいくつか聞いたり見たりした。「抜群にうまい」というような。嬉しくてたまらない。でもその一方で、「ああ、やっぱり僕は今日、失敗したのだ」と。玉ねぎのうま味やスープのコクを強めすぎてしまった。こういう後悔は、ずっと引きずる。
カレーの味も少し足りないくらいがいい。

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