カレーになりたい 180311

今年の新刊の原稿に細かくたくさんの修正を入れている。
いつものことだけれど、読めば読んだだけ直したくなる。直せば直しただけよくなっている実感がある。いったいどこまでこんなことを続ければいいのだろうか。終わりがないとはこのことだ。だから、校了するギリギリまであきらめずに読み直し、書き直す。なんと手間がかかることか。つくづく書籍を作る仕事は好きじゃなきゃやってられないと思う。
よくいろんな人から「いいですね、印税生活」とか言われるが、これほど誤解の多い世界もないんじゃないかと思う。僕が一冊にかける時間とそれによってもらえるお金で時給換算したら、高校生でも働きたくないくらいの金額にしかならないだろう。
まあ、とはいえ、僕は仕事という感覚で本を書いたことは一度もないのだけれど。
直せば直しただけよくなる原稿だけれど、一方で、この作業をしながら頭の半分は説明しがたい敗北感や虚しさが駆け巡っている。原稿がよくなるといってもそれは「当社比」的な改善であって、僕自身が自分でも驚くほどのいい文章が突然ふってわくわけじゃないからだ。
よくなっている。まだこれからももっと良くなるだろう。でも、どうせよくなったって、息をのむような原稿になるわけじゃない。そう、僕にはそこまでの実力がないのだから。この気持ちがどこかにいる。何度も読み直し、何度も書き直す行為は、自分の実力の足りなさを実感する行為でもあるのだ。
あーあ。
なんでこういう感じにしか書けないんだろうな。
あーあ。
あーあ。
あーあ。
作業をしながら何度も思う。
たった今もその葛藤と戦ったばかりだ……。
 

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