カレーになりたい 171007

出張料理集団「東京カリ~番長」が18周年を迎え、19年目に突入した。おめでとう。
1999年の9月に生まれたこのグループは、カレーのライブクッキングを主軸に全国各地を回ってきた。ある人の言葉を借りれば、「史上最強のシロウト集団」だし、また別の人の言葉を借りれば、「カレーでイベントができるというコンセプトを世の中で一番最初に体現した集団」である。なんて素敵な集団なんだろう(笑)。
そんな東京カリ~番長を僕は今年の初めに脱退した。18周年をメンバーとして迎えられなかったということだ。脱退した理由は一言では言えない。ただ、最も意外だったことは、思いのほかたくさんの落胆や反対があったことだった。
「水野さんが立ち上げたグループなのにどうして辞めるんですか?」
「水野さんがここまでメジャーに育てたのに手放すなんてもったいない」
「水野さんのグループなのに……」
確かに僕が立ちあげたが、僕のグループではないし、僕が育てたわけではない。
なんにしても「もったいない」と口ぐちに言われることが僕には全く理解できなかった。感覚が違う、としか思えなかった。みんなが心配(?)してくれたのは、おそらくこういうことだろう。自ら立ち上げて長年、一生懸命努力してお金も労力も使って種をまいてきた、投資してきたグループがメジャーになりつつある。「さあ、ここからが刈り取りの時期だ」、「番長の水野を謳歌できる環境がそろった」というこのタイミングでまさかグループを去るだなんて。信じられない。
もめたんじゃないか、みたいな憶測も流れた。違う。
番長を辞めてカレースターを取ったんだみたいな憶測も流れた。違う。
NHKとかによく出るようになってメジャーを選んだんだ、みたいな憶測も流れた。違う。
水野さんも変わったな、みたいなことを一部で言われているらしい。違う。
どれも全部違う。みんな色んなことを考えるんだなぁ、と思った。
僕はメジャーになりたいみたいな気持ちがないし、地位や名誉や富が欲しいとも思ってない。過去に築き上げた(?)ものがあったとしても、そのひとつが東京カリ~番長という集団だったとしてもそこに執着する気持ちもない。だから、辞めようと思ったときにもったいないという感情はちっともわかない。僕が持っているものを誰かにあげたり誰かに取られたりすることはなんとも思わない。
それよりも次とか先を見て進みたい。新しいことをやりたい。あ、飽きっぽいのかな。
僕が東京カリ~番長を辞めようと思い始めたのは、3年~4年ほど前からだ。リーダーには相談していた。一番大きな理由は、ちょっとおこがましい話だけれど、「僕がいたらこの集団は成長しないかもしれない」と思ったから。確かにこれまで「東京カリ~番長は水野のものだ」と思われているところがあった。「東京カリ~番長=水野個人だ」と思っている人も多かった。「え? グループなんですか?」とか。僕のカレー活動が目立っていたから仕方がないのかもしれない。でも、カレー好きが集まった集団ではなく、カレーをモチーフにいろんなことを楽しむ集団なのだから、カレー活動をせっせとやっている僕がこのグループの中で目立つのは健全ではない。他のメンバーもやりにくいだろう。自分の所属するグループが水野のものだと言われ続けたら。
僕が辞めたら、みんなもっとのびのびと好きなことをやるんじゃないか。最初にこれを相談したら、リーダーからは、「水野が立ち上げたのに水野が辞めるのは無責任だ」みたいなことを言われて反対された。でも、ここ数年、タイミングを見てその話をし続けていくうちにリーダーも「そのほうがグループのためかもね」と考えるようになった。
一方、東京カリ~番長の活動は、特定のメンバーに絞られつつあった。リーダー、SHINGO/3LDK、シャンカールノグチ、水野仁輔の4人。みんな仕事があって自分の生活があって、その合間をぬって番長活動をするわけだから、時間や労力が割けないのは仕方がない。モチベーションの高いメンバーだけがいつも顔を合わせるようになる。この4人が番長Aチームと呼ばれるようになり始めると(笑)、他のメンバーも、「まあ、Aチームが動いてるからいいか」みたいな空気を出し始める。
Aチームの4人だけで東京カリ~番長名義でずいぶんといろんなイベントをやった。Aチームに頼り切っているグループの状態もいまいち健全ではない気がしていた。SHINGOやシャンカールは、ソロ活動もし始めていたし、個人で主催したイベントも十分に集客できる実力を持っている。
Aチームで福岡に遠征したとき、イベント終了後に打ち上げに行った割烹料理屋さんの個室で僕が切り出した。
「SHINGOとシャンカール、カリ~番長、辞めたら?」
僕は自分が辞めようとしていることはあえて言わなかった。でも、4年もの間、辞める辞めるとリーダーに言い続けていたから、どこかで聞いていたかもしれない。SHINGOの反応は、「まあ、それもありかもね」というニュアンス。シャンカールの反応は、「えー、辞めるのー!?」というニュアンス。ふたりとも前向きにとらえる気持ちはありつつも未練があるようだった。だって、東京カリ~番長の活動はとっても楽しいから。
でも、このまま僕たちがい続けたら、このグループのためにならないと思う、と話をした。このころにはリーダーも僕の意見に賛成していた。僕はこのAチームで別のグループを結成しようよ、と持ち掛け、名前は「カレー将軍」にしようと4人で決めた。
SHINGOとシャンカールが番長をやめて将軍を結成する。リーダーと僕もそこに参加する。ブルーハーツがハイロウズになったように。
「SHINGOとシャンカールは甲本ヒロトと真島昌利だね」
とかなんとか酔った勢いで言ったらシャンカールの目つきが変わった(笑)。ふたりは番長を辞めることを決め、カレー将軍が結成された。遅れること半年ほどで僕もリーダーの許可をもらって東京カリ~番長を脱退することになった。
調理主任の僕が辞めるわけだから、新しい調理主任がいたほうがいい。ナイルレストランのナイル善己くんを口説いてメンバーに入ってもらうことになった。SHINGOとシャンカールが抜けた穴には、メロディ主任として中塚武くん、発酵主任としてシモジが入ることになった。リーダーはリーダーのまま東京カリ~番長に残った。旧メンバーの3人が抜け、新メンバーの3人が入った東京カリ~番長は今までよりもパワーアップした気がして、僕は嬉しかった。そんなことがこの1年くらいの間にあったのだ。
とまあ、すごく端折って簡単に説明すると、そういうことである。僕個人の事でいえば、東京カリ~番長を脱退してカレー将軍に入った、というだけでそれ以外は何も変わっていない。カレー将軍が18年続くかどうかはわからないけれど。
東京カリ~番長18周年記念イベントに遊びに行った。もちろん、4000円の会費を払って客として酒を飲んでおおいに楽しんだ。久しぶりに顔を合わせたメンバーとも盛り上がり、新メンバーにもご挨拶。メンバーでなくなった僕は無責任なことをあちこちで言い散らかして楽しんだ、無責任ついでにイベントにオリジナルカレーパンを作りに来てくれた、三軒茶屋「ブーランジュリシマ」の島くんに声をかけ「番長メンバーに入りなよ」と誘った。リーダーも同じことを考えていたようで盛り上がった。こういう展開はたいてい実現するので、きっとそのうち、島くんはパン主任としてメンバー入りするのだろう。楽しみだ。
メンバー全員がそれぞれに作ったカレーを食べた。番長イベントでメンバーの作ったカレーを食べるのはいつぶりだろう。10種類くらいあったカレーをどれも抜群においしくて、正直、びっくりした。
「今日は俺のが一番人気ないんだよね」
と一番上手にカレーを作れるはずのリーダーがそう言った。
もう、さすがに「東京カリ~番長は水野さんのグループだ」と言う人はいなくなるだろう。そして、いつか、僕は自分がこのグループを去ったことを後悔する日が来るかもしれない。来るといいな、と思う。
さて、僕らはカレー将軍で何するかな。東京カリ~番長に負けない活動をしたいと思う。
改めて、東京カリ~番長、18周年おめでとう!


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