カレーになりたい 170712

午前中にNHKの番組ディレクターと打ち合わせをした。8月に放送される番組で3日間に渡ってカレーの作り方を紹介してほしいという。ほんの少しの出番しかない番組で、収録をするスタイルだが、1か月前にEテレ「趣味どきっ!」のプロデューサーの紹介で、連絡があり、メールでやり取りし、今回の打合せ。収録は、2週間以上先。念入りな準備をして臨む形になる。和やかに打合せし、方向性もほぼ決まった。あとは、当日までメールでやり取りすることになった。
打合せ後、午後に全く別件で、ある民放の朝の人気情報番組から出演依頼のメールがあった。カレーを題材にするから出演して少しだけコメントがほしい。「番組は明日なんですが、いかがでしょうか?」とのメール。かなり焦っているようで、僕の個人メールのほかにこの「カレー計画」の問合せメールアドレスにも同じメールが入っていた。僕は、今月末までみっちり予定が入っているため、出演はできないからお断りした。「電話出演だけでも……」とさらにメールがあったが、本当に電話出演の時間すらないのだ。再びお断りすると、「今回は時間のない中で失礼しました」と丁重なメール。それを読んで少しだけ申し訳ない気持ちになった。
こういうケースは本当に珍しい。こういうケースというのは、最後の低調なメールを受け取るパターンである。今日の明日みたいな出演依頼は、テレビは本当に多い。この時点で僕は物理的に無理だし、そもそも時間があっても前向きな気持ちにはなれない。どんなアウトプットでも僕は自分が納得のいく準備をしたうえで臨みたい。今日の明日でそれはできない。時間だけの問題ではない。依頼主のスタンスもいつも気にしてしまう。人一倍、この点については敏感かもしれない。依頼主がどのくらい僕を必要としてくれているのか。僕はすごく大事にしている。
長年の経験のおかげ(?)か、ファーストコンタクトのメールでそのレベルは判断できる。その依頼は、僕でなければならないのか、それとも僕は2番目や3番目の候補だったのか。誰でもいいからカレーで誰かが出てもらいたいのか。僕はわがままな性格だから、「水野さんじゃなきゃダメなんです」というスタンスを示してくれた依頼には、できるだけ全力でこたえたいと思っている。仮にそれが嘘だったとしたら、口説くための飾り言葉だったとしたら、それは文面でわかる。もしくは、一度でも打合せで会えばすぐわかる。それでもいいとさえ僕は思っている。嘘でもいい。嘘でもいいから「あなたじゃなきゃダメなんです」と言ってほしい。
あなたじゃなきゃダメなんです、という対象の人に「今日の明日」という依頼は来ない。それでも時間のない中で番組を作っている人たちの状況を想像すれば、「今日の明日」、「今週の来週」もありえるのだろう。そういう場合は、今回のように、丁重なメールをいただくことで、「誠実な依頼をいただいていたんだな」と嬉しい気持ちになる。でも、極めてレアケースだ。
その点、書籍は違う。1冊の本を作るのに半年以上前から依頼があり、長い時間をかけて作る。最近は、出版までの時間が長ければ長いほどいい本ができるという錯覚(?)もあったりするせいか、2年3年かけている本もあるし、最初に企画が上がってから5年かけて作る本もある。お互い、根気よく内容を詰めてモノづくりできる環境があるのは、本当にありがたいことだと思う。
きっと、ほとんどの場合、取材を依頼する人は、取材を受ける人の気持ちを実感する機会がないんだと思う。僕は、今は取材を受けることが多いけれど、カレー店に取材を依頼する立場も長いこと経験してきたから、誰かに何かをお願いするときには、できるだけそれがその人でなければならない理由を考えてから話をもちかけることにしている。ただ、その気持ちが本当に届いているかどうか、いつだって自信はないのだけれど……。


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