NHKの番組「趣味どきっ」に出演させていただいた。
2カ月間、合計8本のレギュラー番組である。
カレーをさまざまな角度から切って紹介していく。
そのテキストがこの本となる。
番組の講師が僕だから僕がまるごと1冊を作ることになる。
ある程度のことを網羅してわかりやすく伝えられるNHKらしいテキストになったと思う。
ただ、正直いって、僕自身にはあまり思入れがない。
なぜだろう。
まるごと1冊てがけたという点でいえば、他の著書と変わらないはずなのに。
きっと僕は本が主体でないとダメなんだろうな。
このテキストはあくまでも番組ありきで、それを補完するためのテキストだ。
カレーの本をどうやってつくろうか、を考えて取り組んだものではない。
それが、僕にとって「作品観」の極めて薄いものという位置づけにさせているのかも。
ただ、このテキストは、とにかくよく売れた。
番組のテキストとしては異例の重版を何度かしたし、
番組のオンエアが終わっても売れ続けた。
めったにないことだという。
お金のことでいえば、僕は著者ではないから、僕に印税が入るわけではない。
だから、ということではないけれど、きっとそんなことよりも
僕は自分の作品である意識が薄いからなんだろうけれど、
あのテキストが何冊売れたのか、知らない。
その他の著書は基本的にすべて、それぞれ何冊くらい売れているかを把握している。
何回目かの重版のときに編集者に聞いてみたことがある。
帰ってきた部数は正確に覚えていないけれど、何万部かだった。
その時点で、過去に僕の著書で一番売れた本と同じくらいの部数だった。
何年もかけて地道に売り上げを積み重ねてきた本と同じ部数を
たった数か月で売り上げた。
テレビってすごいな、と思った。
でも、その影響力の強さを実感し、ますます僕の気持ちは、テレビから遠ざかった。
僕はそんなに強い影響力を持つ場所でアウトプットをしたくはない。
数か月で何万部も売れるような本は、僕はたぶん作りたくない。
(ま、作る実力がないことのひがみですかな)
全国のたくさんの人にカレーの魅力が伝わったことについてはよかったかな、と思う。
42冊目/もっとディープに!カレーの世界
カテゴリー: 僕はこんなカレー本を出してきた