カレーになりたい 171127

スパイス棚を作ろうとしている。
棚といっても洋服ダンスくらいある巨大なやつだ。AIR SPICEオリジナル。商品ではなく、僕が個人的に使うためにあるインテリアデザイン会社にお願いしている。そのデザイナーと恵比寿駅でたまたますれ違った。やってきた日比谷線から降りてきたデザイナーと乗ろうとする僕。
「お~」
とすれ違いざまにお互い言っただけで会話もせずに別れた。その後、会社の社長にメールした。
「いま、世界一かっこいいスパイス棚をデザインしてくれそうな男とすれ違ったわー」
もちろん、彼の名前は書いていない。そんなことしたらつまんないし、そもそも、それならわざわざメールを送る必要もない。僕としては、「お願いしているスパイス棚のことだけど、あれ、世界一かっこよくデザインしてくださいよ、頼んだよ」と社長にもデザイナーにも伝えたかったのだ。
すぐに社長から返事があったので、しばらくやり取りをした。
「どこですれ違った?」
「恵比寿駅のホームで。なんとなく仕事できそうな雰囲気だったな」
「建築家気取りだったか!笑」
「気取りだったなー。ま、見掛け倒しの可能性もあるね」
そこまでやり取りしたところで、デザイナーからも僕とすれ違ったことの報告メールが社長に入ったようだ。
「スパイシーな顔したスターに遭遇した、ってメールがきた」
もちろん、そこに僕の名前は書いていない。ここで社長とのやり取りは終了した。そのまま目的地まで地下鉄に乗りながら、僕は小さな敗北感を抱えていた。この“遊び”は、3人の間で申し合わせたように成立したけれど、「世界一の棚を作りそうなデザイナー」よりも「スパイシーな顔したスター」のほうが表現としては圧倒的に面白い。明快だ。くそー、負けたー、くやしー。なんか、ずるいよな。スパイシーなスター。スパイシーなスターか。自分のことをわかりやすく表現されるって、なんか微妙だ。
仕返しに棚のデザインが出てきたらたっぷりダメ出ししてやろう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。


*

CAPTCHA


▲UP