欧風カレー番長メンバー・MASAのこと

 僕・水野仁輔がMASAと出会ったのは、6年ほど前のことである。
 ある知人(編集者)から、東京カリ~番長に出張料理の依頼があった。
「友達がイギリスに移住することになったからパーティでカレーを作ってほしい」
 東京カリ~番長は、基本スタンスとして、個人的なパーティへの出張は行わないことにしている。断らなきゃな・・・、とメールを読み進めるとこうあった。
「彼はとにかくカレーが好きな男なので、みんなで話し合って、東京カリ~番長のカレーで見送ってあげたら喜んでくれるだろう、ということになった」
 僕らにとっては嬉しい口説き文句である。自由が丘でパーティは実施され、僕はイギリス移住を決めたMASAに会った。
 あれから5年後、取材のためにロンドンに滞在することとなった僕は、MASAにコンタクトを取り、会いたいと伝えた。彼からのメールには、ロンドンのモダンインディアンレストランのトレンドについてのレポートがどっさり送られてきた。宝の山のようなメールの文面の最後に追伸があった。
「自由が丘のパーティのとき、僕は自分が作った渾身のカレーを持ち込んで、水野さんに食べてもらったんですが、覚えてますか?」
「いや、ごめんなさい。覚えてない」
「あのとき、水野さんは僕のカレーを食べてこう言ったんです。『うまいけど、だしのうま味に頼りすぎてるね』って」
「本当に!?」
 全く身に覚えがなかった。そういう状況であまり偉そうなことを言うタイプじゃないと自覚しているだけに驚いた。でも、おそらくあのときの僕は率直にそう感想を述べたんだろう。
「水野さんにそう言われたのがすごく悔しくて、僕はロンドンに渡ってからしばらく、だしのうま味に頼らないでおいしいカレーを作れるようになるためにゴア料理店で修行したんです」
 メールには、インド料理店の調理場でコックコート姿で微笑むMASAの写真が添付されていた。僕がその後、MASAへの最大の敬意を胸にロンドンで共に食事を楽しんだことは言うまでもない。
 そんな彼とこれから欧風カレー番長で、“だしのうま味を最大限に活用したカレー”の開発に取り組むのは、非常に楽しみだ。
 
 
◆MASAのプロフィール
1974年、福島県生まれ。ロンドン在住。大学時代から世界30か国をまわり、インド、タイ、アフリカなど各国の文化に親しむ。IT、旅行、金融、ライターなどの業界経て2010年にロンドンでベンチャーを起業。カレー大好きが高じて、自分でも毎日のように調理するようになり、様々なレシピを研究。ロンドンの南インド・ゴア料理専門店「マ・ゴア」で厨房修行経験あり。
 
 
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