カレーになりたい 171116

ここ数日、毎朝、カボチャと向きあっている。
フードトラックで出すスパイスおかずにカボチャの料理を開発したのだが、これが抜群においしく仕上がった。早速、開催中の「生活のたのしみ展」で5日間連続で提供するべく、毎日早朝に仕込むのだけれど、思いのほか、大変。
当たり前のことだけど、カボチャが硬いのだ。それを、7キロ、ひと口大に切らなければならない。大変だ。腕も手も指先も痛くなる。大変だけれど、楽しい。一つずつ頭を悩ませながら処理をする。どうすれば効率よく切ることができるのだろうか。庖丁はどの部分をカボチャのどの角度からどう入れて切り分けるのがいいのか。4等分してから先は何を優先して進めるべきなのか。
できるだけ力を入れずに切っていくための手法とは? わたを取るタイミングは? 皮のむき方は? 小さく切り分けていくときにカボチャをどの角度でまな板に乗せるべきなの? 庖丁の握り方はときどき変えるべき? 考えるべきことはいくらでもある。
考えているうちに、そもそも誰がこんな外側の硬いオバケみたいな野菜を食べようとしたんだろうか、とか、なんでこんな野菜が世の中に生まれたんだろうか、とか、そんなことまで疑問に思えてくる。
単純作業は大好きだ。歩幅は狭いけれど、一歩ずつ確実に上達していくのが自分でわかる。3分かかった作業が、2分45秒になり、2分30秒になり、画期的な方法を見つけると2分に短縮できたりする。調理上は、「できる限り同じ作業をまとめる」のが効率化への鉄則だ。3個の玉ねぎがあったら、ひとつずつ皮をむいてヘタを落とし、切り分けるのではなく、3個の皮をむき、3個のヘタを落とし、3個を切り分けるほうがスピードは速い。
もうひとつ、動きをできるだけ単純化させたほうがいい。皮をむいてまな板の上に散らばったものをまとめてごみ箱に捨てるなら、ゴミ箱の上で皮をむいたほうがひと手間少なくて済む。
それくらいのことはいつもやっていることだ。カボチャと向き合っているときに僕が悩んでいるのはその先のことだ。それを考えながらひたすら処理をする。いくつかのことがわかってきて、仕事のスピードが速まってきた。たとえば、丸のままのカボチャをはじめに4等分に切り分ける時には、包丁の刃先を突き刺した後、実とわたの境界線がどこにあるのかを感じながら適切なポイントに力を入れていくとスッと切れていく。わたを取るのは、いくつかに切り分ける前。4等分の状態でスプーンを使ってほじり出すのがベスト。そのまま皮を削り始める。
皮を削ってカボチャの表面に現れるグリーンとオレンジのまだら模様をみていると、遥か宇宙の彼方から地球を眺めているような感覚になってくる。こんな星が銀河系の外に存在するのかも、とか考え始めると、まるで彫刻家になったような気分になってくる。いまのはうまく削れたな、とか、この表情好きだなぁ、とか。気づくと夢中になっている。
なかなか上達してきたな、俺。でも、もっといい方法があるはずだ。日本で一番、カボチャを上手に処理できる人はどこにいるんだろうか? そんな人が見つかったらぜひ取材してみたいと思う。さ、明日もカボチャと格闘だ。

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