カレーになりたい 180426

バーテンダーのようにスパイスをブレンドできる人が増えたらいいなと思った。
 
友達に薦められた香港島のBARへ行く。
カウンターに腰掛け、オーダーするときに、「スパイスかハーブのきいたカクテルってありますか?」と尋ねると、若い女性バーテンダーが2つ薦めてくれた。ひとつを選んで待つ。待っている間、僕のカクテルを作るバーテンダーの動きを眺めていた。
いくつかのリキュールやらスピリッツやらを計量しながら手際よくシャカシャカに入れてシャカシャカする。その仕草は、抜群に決まっているわけではない。しかも、彼女は若い女性バーテンダーだ。若いから、女性だから、というのは偏見だろうけれど、20年30年と経験を積んだバーテンダーを東京で見ているから、それに比べたら心もとない気になってもおかしくはない。
おかしくはないのだけれど、そんな気にはならないのだ。なぜだろう、このどことなく漂う安心感は……。そう思って気が付いた。そうか、カクテルの世界は、もう確立されたレシピがあるのだ。きっと100種類とか200種類とかあるカクテルのレシピが頭に入っていれば、その通りにブレンドしていけば、間違いないものが出来上がる。いや、覚えなければならないブレンドは、BARのメニューにある30種類~50種類程度でいいのかもしれない。
BARのカクテルというものは、そういうものなのだ。長い歴史の中で生み出された数々の黄金比。その存在がきっと僕を安心させてくれているのだろう。実際に、彼女が作ったカクテルを飲んでみる。うまいといえばうまいし、別にといえば別にと思う。でも、それがカクテルである以上、好みの問題は別として、「これはこういうものなんだ」と飲める。これも安心感になるのだと思った。
じゃあ、スパイスの世界は?
残念ながら、黄金比がない。黄金比はきっとあるのだろうけれど、それを明文化というか、形にした人がいない。ルール化したり、システムを構築した人がいない。そこに新しい地平が見えるのかも!? どんな種類のスパイスをどんな配合比率で混ぜ合わせたら、どんなフレーバーになるのか。正直いって、いま、その世界は、やったもん勝ちだと思う。
何度か訪れたNYの「La boite」というスパイスショップのブレンダーは、「Art of Blending」という本を出し、30種類以上のブレンドスパイスを販売している。いくつかを買って試したが、やはり、好みの問題だよなぁ、と思った。
それでも彼のその取り組みは、スパイスをカクテルのようにブレンドする未来へ踏み出している(そういうアイデアに基づいているかどうかは知らないけれど)。
BARの世界にカクテルブックがあるように、スパイスの世界にもブレンディングに特化した本を生み出したい。あのバーテンダーのおかげで、真面目に取り組んでみたいことがまた一つ増えた。
 

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