カレーになりたい 180304

「日曜の夜、4人で予約できる?」
「大丈夫ですよ」
「一緒に行く予定のシャンカールがさ、諏訪内君のチェティナードチキンカレーを食べてみたいもんだねぇ、とメールで書いてきてね。ニヤニヤした顔が浮かぶようだよ。高知のイベントの打合せで会場のオーナーさんとかと一緒に行くから、俺はフィッシュカレーを勉強させていただきますよ」
「そういうの、燃えるタイプです。チェティナードチキンカレーと3種類のフィッシュカレーを用意しました!」
とかなんとか、
メールのやり取りをした。
そして、下北沢「moona」へ。予定通り、4種のカレーを食べ、楽しく打ち合わせをして、帰宅する。その夜、夢の中でも僕は「moona」に行っていた。一緒に食事をしている顔ぶれは、覚えていない。予約をしていったメンバーと違う人たちだったことだけは確かだ。
「このチェティナードチキンもおいしいけどね。きっとこのカレーは、moonaに来る一般のお客さん向けの味わいなんだろうね。諏訪内君が本当に食べてもらいたいカレーは、このフィッシュカレーのほうだと思う」
とかなんとか、
僕はどこかの誰かに話している。
なんだ、あの偉そうなコメントは。夢から覚めた途端に思い出して恥ずかしくなった。僕は、食事をしたときに抱いた感想を自分の夢の中で口にしたことになる。なんてこった。
誰かとカレー店でカレーを食べているとき、そのカレーの感想は口に出さないことに決めている。うまいとかうまくないとか、この味はどうのこうのという会話なんて、つまらないと思っているからだ。あ、僕が話すのは、ね。一緒に食事をしている人が話してくれるのは、楽しく聞けるのだけれど。でも頭の中では、いくつかの感想を持っているから、それが夢で出てくることもあるのだろう。
要するに、チキンチェティナードは諏訪内くんらしくない味、3種のフィッシュカレーは諏訪内くんらしい味だと思ったということになる。だからなんだというんだ。ほら、やっぱり、僕がカレーの感想を言うのはつまらない。
ちなみに、僕は外食でカレーを食べたとき、もうひとつ、しないことに決めていることがある。スマホで写真を撮ることだ(ごくごくたまーに大好きな老舗店に行ったときだけ我慢できなくなるのだけれど)。これは、まあ、特別な理由はないけれど、食べる前にスマホで写真を撮るってなんとなくダサいよね、と思っているからだ。同じく、一緒に食事をしている人が写真を撮るのはダサいとは思わない。僕がやるのがダサいだけだ。だから、「moona」のときも料理が運ばれくるたびにシャンカールが写真を撮り終わるまで僕は静かに待った。
たとえば、インスタグラムとかには、外食したカレーの写真はほとんど存在しない(海外の旅先は別として)。
この話をスリランカで「カラピンチャ」の濱田くんとしたときに、濱田くんもインスタグラムに関する“俺ルール”を教えてくれた。彼は営業日に必ず店のメニューボードの写真をアップしているのだが、自分が作ったカレー(料理)の写真は絶対にアップしないことにしているそうだ。それは、「店に来てくれたお客さんが、テーブルに運ばれて初めて自分の料理を目にしてほしいから」という。素敵なルールだと思った。
濱田くんは、夢の中で自分の作るカレーが次々と出てきたりするんだろうか。
いやだな、カレーの夢を見るのって……。 

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