カレーになりたい 180129

チェティナード料理とはなにか? のヒントを見つけるべく、麹町「アジャンタ」を訪れた。来月一緒にインドへ行くシャンカール、来月一緒にマレーシアへ行く「moona」の諏訪内くんと一緒だ。
「アジャンタに」はチェティナードチキンというメニューがあるだけでなく、オーナーであるムールティさんの奥さん、有沢さんは、チェティナード地方を訪れたことがあって、なにかの冊子にチェティナード料理のことを書いているのを読んだことがある。
ご無沙汰している有沢さんに連絡して、お話を伺うことになっていた。食事をしながらチェティナードの話をしていたら、目の前に座るシャンカールが思いがけない言葉を発した。
「うちで仕入れているガラムマサラ、昔はカルパシとスターアニスが配合されていたんですよ」
「ええ!?」
シャンカールさんは有沢さんに向けて話したことだったが、僕の方が大きな声をあげてしまった。すかさず横にいた諏訪内くんが僕に突っ込む。
「水野さん、それ、いま初めて聞いたんですか?」
「うん……」
諏訪内くんが嬉しそうに苦笑いした。だって、カルパシとスターアニスといえば、チェティナード料理を代表するスパイスなのだ。「コチンニヴァース」のラメシュさんも店で使うチェティナードマサラにはこのふたつのスパイスを入れていると言っていた。
シャンカールのガラムマサラにカルパシとスターアニスが入ってた!?
彼は祖父が始めた貿易商の仕事をついでいる。手がけているガラムマサラはインドで彼の会社用にオリジナルに調合されているものだ。しかも、国内で流通する各種ガラムマサラの中でも圧倒的に香りがいいから、もう15年ほど前から僕は使っている。
そのガラムマサラがもしかしたら、チェティナードスタイルのミックスだった可能性があるのだ。そんな重要なことをシャンカールはさらりと言ってのけた。しかも、僕に対してではなく、僕の目の前で別の人に対して……。諏訪内くんが「いま聞いたんですか?」と突っ込むのも無理はない。
有沢さんそっちのけで僕はシャンカールに聞いた。
「いまもガラムマサラにカルパシとスターアニスを入れてるの?」
「いや、いまは入れてない」
「そうなんだ。いつまで入ってた?」
「10年くらい前までかな。昔、水野がうちのガラムマサラはだし粉をいれてるような風味がするって言ってたでしょ? あの当時は入ってた」
シャンカールのガラムマサラは本当に独特だった。スパイスだけで配合したとは思えない風味があった。そのまま塩と混ぜてご飯にかけたらふりかけになるような感じの不思議な粉だった。その秘密は、カルパシとスターアニスにあったのかもしれない。それにしても、僕がこのところずっと「チェティナード、チェティナード……」と言っているのにこんなに大事な情報を一言も伝えてくれないなんて。
有沢さんは、チェティナード料理の特徴は、「財力を背景にした豊かなアロマにある」と言った。アロマという表現が僕のイメージにもぴったりくるな、と思った。
アロマか。
アロマか。
チェティナードにスパイスを探しに行くのは、いまいちなのかも。
アロマを探しに行こう。
アロマに会いに行くことにしよう。
アロマティックジャーニー。
さて、出国まで2週間ほどになった。国内でまだまだチェティナードを探っておくことにしよう。

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