カレーになりたい 170721

新刊「世界のハーブ&スパイス大辞典」のスタッフ打ち上げがあった。担当編集者とは、かれこれ10年の付き合いで、ここまで6冊ほどの本を一緒に作ってきた。彼が新刊完成後の打ち上げで恒例にしている行事がある。それが、「サインの儀」である。
打ち上げ時にスタッフの数分、新刊を持ってくる。それぞれが自分のサインを書き、寄せ書きにして各自が持ち帰るというものだ。たいした「儀式」ではないように聞こえるかもしれないが、共に1冊の書籍を作ったものどうしでねぎらいの気持ちを共有できる、実はとっても有意義な作業だ。
すべての制作スタッフが集合できたわけではないけれど、編集者、デザイナー、スタイリスト、翻訳家、カメラマン、僕の6名が集った。この本は、350ページ以上あるハードカバーの本だから、編集者は打上げ会場に運ぶのに指がちぎれそうになったそうだ(笑)。
各々のサインを書く。僕は別として、他のみなさんは、別に普段からサインを書く機会があるわけではないから、サイン自体を持っていないが、ま、署名をする。自分も含め、6名のサインが1ページに集まった本を1冊ずつ持って帰るのだ。とってもいい儀式だと思う。
著者の立場から言わせてもらえれば、書籍とは、著者のものである。著者が顔も名前も出してその本に対する全責任を負って出版するからだ。そして、その本は、販売され、読者の元に渡ったところで、読者のものになる。でも「著者のもの」から「読者のもの」になるもっと前、製作しているときに書籍は「スタッフのもの」である。少なくともそういう意識で仕事ができた本はいい本になる。
だから、サインの儀を終えて手元に来た1冊の本は、僕にとって宝物になる。ほかの書籍に関しても同じことをしたほうがいいように思うけれど、ま、この編集者のアイデアだから、他の本のときまでこの提案をしたことがない。そして、気を抜いていると、「スタッフサイン本」であることを忘れたまま、誰かに献本してしまいそうになることもあったりして危ない。
ので、僕は、このサイン本は、いつも別の棚にしまうようにしている。

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