カレーになりたい 180607

数日前に風邪を引いた。
風邪になりそうな気配を感じ、具体的にのどが痛くなり、間接が痛みはじめ、熱が出て体がだるくなった。
その日の夜、僕は、薬局で売られているような総合感冒薬(ルルみたいな?)を飲んだ。
成人は1回3錠のところ、5錠飲んだ。
そのまま厚着をして布団を大げさにかぶり、寝た。
朝目覚めるまでに5回ほど汗びっしょりになって着替えた。
朝になるとかなりスッキリしていたが、完治したような具合ではなかった。
だから、その日は、朝と昼、自宅にあった抗生物質をいくつか飲んだ。
夕方には完全に元気を取り戻していた。
もっと容態がひどくなったり、いつまでも長続きしていたら、僕は病院に行っていただろう。
僕は基本的には西洋医学を信用しているから、体調が悪ければ普通に薬を飲んだり病院に行ったりしようとする。すぐに病院へ行ったら負けだ、みたいな自分との闘い的な我慢大会はするけれど、それはそれとして、西洋医学に頼って生きている。
だからなんだと自覚しているけれど、東洋医学の観点から、アーユルヴェーダの観点からスパイスを使ったカレーや料理が体にいい、みたいな話題が始まると、そっと逃げ出したくなる。
ホントですか? それ。僕にはよくわかんないんですけど。
そんな気持ちになるから、この場にいないほうがいいな、と思ってしまうのだ。
スパイスが体にいいらしいことには僕も賛成している。
でも、僕は自分が本当の意味で納得したいし、それまでこのことについてはあまり触れたくないと思ってきた。
数年前から、西洋医学の医学博士と薬膳カレー(この言葉もいまいち好きじゃないけれど)の共同研究を始めている。具体的なアウトプットがないのは、まだ僕が納得していないからなのだけれど、先生とのやり取りの中で、「そうか、僕は一生この分野で納得できることはないのだな」と確信したことがあるので、じゃあ、完璧を目指さないまでも、何か自分なりにこの世界でできるアウトプットを始めよう、とようやくそういう気持ちがわいてきている。
そんなこんなで、横浜にある、大学の医学部を訪れた。その先生に改めてインタビューをしたのだ。
そのインタビューの冒頭で、僕は、ここ数日前に僕の体に起きた風邪という症状とその対処について尋ねた。
すると、先生の答えは、意外なものだった。
「水野さんの性年齢をはじめ、体質や生活習慣などがある程度わかっているという前提で僕の推測でいえば、まず、抗生物質は何の役にも立っていないと思います」
「ええ!?」
「薬局の薬を倍量飲んだのは、いいことではありませんが、きっと熱を下げるという意味ではそっちのほうがまだ役立っている」
「なるほど。いっぱい汗かいたのは?」
「それもそれなりの効果はあったと思います。でも、風邪が治ったのは、水野さんが本来持っている免疫力によるところが一番大きいはずです」
意外だった。
その後、先生には、西洋医学とは何か? 東洋医学やアーユルヴェーダとは何が違うのか? 西洋医学の可能性はどこまであるのか? 弱点はどこにあるのか? などについて話を伺った。何度か聞いたことも改めて説明してもらった。これらのことを今後、具体的にプロジェクトとしてアウトプットしていくために。
すごくおもしろかった。
簡単に言えば、東洋医学やアーユルヴェーダは経験則に基づいている一方で、西洋医学は実証型。僕は「経験則的にこうなんだ」と言われても「なぜそうなるのか?」を説明してくれなかったら納得することができない体質だから、実証型が性に合っているのだろう。
インド人に玉ねぎの切り方によって生まれる味わいの違いを尋ねても「そんなことは知らん。俺はこうやってやってきたんだ」と言われる。
でも日本人のシェフ(少なくとも僕を含め僕の周り)は、「それを説明してくれなかったらカレーがおいしくなるということを納得できない」となる。
どっちがいい、ではなくて、どっちもあるのだろう。
思えば、「東洋の神秘的な方法で配合されています」との触れ込みでイギリスから入ってきたカレー粉について、僕がブレンドに法則性を見つけてメソッド化しようとしていることだって、アプローチとしては極めて西洋医学的である。
あー、とにかく楽しいインタビューだった。
この手のインタビューをこれからいろんな先生にしていきたいと思っている。何人に聞いても答えは出ない。でも、わからないから聞く。聞いてわかったようなつもりになったけれど、やっぱりわからなくてまた聞きに行く。と繰り返すプロセスをアウトプットすることが、スパイスやカレーの世界で新しい発信になるんじゃないかと思っている。

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