カレーになりたい 180307

マスターピース(代表作)というものについて、最近、考えている。
過去に僕が作ったカレーの中で、マスターピースと呼べるものは、ひとつだけある。東京カリ~番長、発足後すぐ、公園カレーイベントをしていた時代によく作っていた「赤カリ~」だ。もう17年~18年前のことになる。
当時は、イベントのたびに「今日は赤カリ~は?」と聴かれたし、昔から僕のことを知っている、当時、食べたことのある人には今でも「あの赤カリ~を食べたいなぁ」と言われる。
それ以降、マスターピースと呼べるようなカレーは登場していない。マスターピースというのは、自称できるものではないから、周囲の人たちに「水野と言えばあのカレーだよね」という評判が立たないことには実現しない。
「二度と同じカレーを作らない」をモットーにずっと活動してきているわけだから、生まれにくいのかもしれない。
一方で、僕が作るカレーじゃなくて、僕が書籍などで提案するカレーのレシピについては、いくつかマスターピースと呼べそうなものがある。たとえば発売後、10刷を超えた「はじめてのスパイスカレー」の巻頭のチキンカレーがそうだし、AIR SPICEの「0号 基本のチキンカレー」もそうだと思う。
「スパイスを使って自分でこんなにおいしいカレーを作れるなんて!」という感想を何度も何度もいただいている。
先日、スパイスの効能を共同研究(というとおこがましいか)している医学博士の先生と会食をした。彼もAIR SPICEを定期購入してくれている。
「毎月すごくおいしくできるんですけどね、去年作ったカレーの中で、信じられないくらいおいしくできたカレーがあったんですよ。なんだったかなぁ」
「どれでしょう。バターチキンカレーですか?」
「んんん。とにかくね、食べてくれた人が、僕が作ったってまるで信じてくれないほどのおいしさだった」
「それ、知りたいですね~、なんだろう」
「なんだったかなぁ」
しばらく別の会話をしていたら、突如、先生が思い出した。
「アサリのカレーだ!」
確かにアサリのカレーをAIR SPICEで出した。しかも、それは、12か月分のカレーの撮影をしたときにスタッフが全員一致で「これが一番うまい!」と言ってくれたカレーで、そして、ユーザーの方々からの熱い感想もダントツに多かったものだ。
「あんなにおいしいカレーができるなんて!」
「もう一度買いたい」
「バックナンバーは売らないんですか?」
たくさんの人が驚いてくれた。あれは、マスターピースと言っていいかもしれない。
自分の代名詞となるようなカレーが生まれるのは、うれしい。でも、それは僕が「これはうまい!」と自分で思うカレーとは必ずしも一致しなかったりする。それがまた不思議で面白い。


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