カレーになりたい 180209

マラティムクだかマラティモクだかマラシムクだかマラシモクだか知らないが、そんな名前のスパイスがある。チェティナード料理に使われるマニアックなやつだ。それを初めてインド料理店「ヴェヌス」で見た。シナモンに似た甘くいい香りがする。
錦糸町「ヴェヌス」を貸し切りにさせてもらって、敬愛するシェフ、ヴェヌゴパールさんにチェティナード料理だけでフルコースを作ってもらった。マラティムクは、ビリヤニにだけ使った、という。このスパイスを見て香りを嗅いで潰して中身や種をいじったのは、みんなが来る30分ほど前のことだ。興奮した。このスパイスが木(?)になっているところを観に行きたいと思った。
その後、数々のおいしい料理が運ばれてきた。どれもおいしかったし、色々と考えさせられることはあって、来週から行くインド・チェティナード料理をめぐる旅に向けていい刺激になったけれど、最も興奮したのはマラティムクを触っているときだった。
食べ終わって20人ちょっとで店をぞろぞろと出ていくとき、「楽しかったなぁ」と思った。帰りがけに電車に乗りながら思う。僕は、希少なスパイスに興奮したけれど、チェティナード料理そのものに強く興奮したわけでもなく、それぞれの料理を掘り下げたいという欲がめきめきと沸いたわけでもない。チェティナード料理って不思議だな、興味があるな、と思い始めたのをいいことに尊敬するシェフに会いに行き、話を聞き、店にない特別なメニューを作ってもらい、シェフたちに料理に専念してもらうべく店を貸切らせてもらい、興味のありそうな仲間に声をかけ、みんなで集まって食べた。そのことが楽しいんであって、「チェティナード料理とは何か?」に対してどこまで本気で興味があるのかは怪しいのかも、と思った。
チャローインディアというプロジェクトは、そうやって7年も8年もやっている。少なくとも僕の意識はそうだ。興味の対象へ効率的にアプローチすることや本質にたどりつくことはそれほど重視をしていないのだろう。何かに興味を持ったら、持った自分を最大限に利用して、どんな風にそこから先を楽しめるか、自分のアイデアや実行力を試している。
もしかしたら僕は、答えが見つかりそうになったら避けて通りすぎるかもしれない。
見てみぬふりをするのかもしれない。
日本のカレーのルーツを探りにイギリスへ行ったときもそうだった。大英図書館に1週間以上、毎日のように通った。でも、実際には、2日目とか3日目とかに、図書館で出会える情報はほぼすべてオンラインで日本にいても探れるものであることがわかったのだ。でも、僕は4日目も5日目も通った。だってあの頃はそうやって日々を過ごすことに楽しみを見出していたのだから。
チェティナード料理に興味があることは紛れもなく本心だ。でも、興味の質やレベルは疑わしい。僕はきっとチェティナード料理に興味があるようなふりをして、自分自身にそう思い込ませて、「水野、お前は今、チェティナード料理に興味があるんだよな」なんて調子で催眠術師のように自分自身を騙してインドへ向かおうとしているのである。
旅の間もアイデアをひねり、いろんな偶然を期待して、楽しみたい。だから催眠術よ、どうかとけないでほしい。そう、それは僕次第なのだけれどね。


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