カレーになりたい 180110

久しぶりにランチではしごしてカレーを食べた。
AIR SPICEの春からの試作結果をいよいよ確定させなければならず、このタイミングで一度、自分の中にあるおいしいカレーの基準を再確認しておこうと思ったからだ。新大久保のハラールフードショップに足りないスパイスを買いに行くついでに2軒寄ることにした。新大久保の店たちのスパイスは、品質はイマイチだけれど、マニアックなものが集まっているから、「ちょっとあれが足りない」みたいなときにちょうどいい。
買い物を終えて、ムットのチキンカレーを食べ、コチン二ヴァースのチキンカレーを食べる。タミル・ナドゥ出身のムットさんのカレーとケララ出身のラメシュさんのカレー。南インドの東西を30分以内に食べ比べるのは、記憶の新しいうちに比較ができていい。
基本的にインド料理店へはランチタイムには行かないようにしている。自分が働いていた経験からも思っていることだが、ランチのカレーは、手抜きの場合が多いから、本当にその店を味わいたかったらディナーに行く。もしくは、ランチに行っても、ディナーメニューを注文する(そういう融通がきく店なら)。
でも、今回は、あえてランチがいいと思ったのだ。ムットさんやラメシュさんが手を抜いているとは思えないし、どうせ手を抜いたってじゅうぶんうまいのだけれど、いい意味で肩の力の抜けたチキンカレーを2種類食べられるのは、「自分の基準を再確認する」という作業には適していると思ったからだ。どちらも予想通り、肩の力が抜けていて、おいしかった。僕が大好きな「おいしすぎないおいしさ」がそこにはあった。
「この程度なら俺にも作れるな」という大いなる勘違いをさせてくれる味だった。この感情が、少なくともムットさん、ラメシュさんのカレーに対して沸くことについては、勘違い以外のなにものでもない……。
ただ、これらのチキンカレーを食べて僕がおいしいと思うのは、僕自身の好みがそこにあるからであって、じゃあ、みんなが同じようにおいしいと思うかと言えば、そうではない。しかも、夜のメニューと違ってyはり、ランチのカレーは、スタンダードでありながらも、ちょっとだけ物足りない仕上がりになっているから、「それこそがおいしいんだ」と思える人は少数派だろう。
そういう意味でいうと、僕がAIR SPICEのカレーとして開発するレシピは、「おいしすぎないおいしい味」を目指してはイケナイ。「おいしいカレー」を目指さないと。おいしく作れるレシピに仕上げて、みんながそれを再現したときにさまざまなものの影響で仕上がりに幅ができる。その幅の中に「おいしすぎないおいしさ」が生まれるのはありだけれど、はじめからそこを狙うと作ってくれた人が、「あれ? なんかイマイチだな」と思うケースが増えてしまうだろうから。
この「自分の好きな味」と「AIR SPICEで実現させるべき味」との小さなギャップを確かめることがランチカレーはしごの目的だったのだ。ムットさんとラメシュさんに感謝しなくては。さて、なんとなく基準は定まった。でも、こうなってくると僕は目的そっちのけでこの基準探しが楽しくなってしまうところもあって、明日も明後日もチキンカレーを食べに行こうか、とワクワクしてしまう。それもランチタイムのインド料理店の力の抜けたやつを。
レシピの撮影は迫っている。基準の味と好みの味を踏まえた上でおいしいカレーとその奥にちょっとした驚きを埋め込んでいいレシピに仕上げたいと思う。

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