カレーになりたい 171128

「curry rice」と編み込まれたニットを着て外へ出たのは、何か特別な理由があったからではない。しいてあげるとするなら、カレーの用事がいくつか続く日だったからだ。週末にイベントで一緒になるカレー屋さんに挨拶に行き、とある編集者と来年のカレー本について打合せをする。早めの夕方に神田の蕎麦屋に行き、日本酒を飲みながらカレー南蛮でしめることになっていた。ま、毎日カレーの用事が連続するのだから、その日だけが特別というわけでもないのに、今思えば、なぜ、カレーニットを羽織ったりしたんだろうか。
ランチのカレー屋さんに入り、席に座り、注文をし、カレーを待ち、食べ、会計をして店を出るまで、ずっとなんだか恥ずかしい気持ちを抱えていた。
「curry rice」のニットを着てカレー屋に来るなんて。
僕は、僕が自分の腕で胸の「curry rice」のあたりをなんとなしに隠そうとしてときおり変な恰好になっていることに気が付いていた。
最寄り駅の喫茶店で編集者とカレー本をの打合せをする。長い間、真剣にどんな切り口がいいかについて話し合ったが、その間もずっとなんだか恥ずかしい気持ちを抱えていた。
「curry rice」のニットを着てカレーの打合せをするなんて。
夕方になって神田に移動する。老舗「まつや」に入って友達の女子ふたりと3人で日本酒の熱燗をチビチビし始める。開店直後に入って閉店間際まで長居した。いまをときめく映像業界で活躍するふたりだから、話の内容は刺激になった。「カレーに置き換えるならさ」とか、「それってカレーの世界でもできるね」とか、映像の話を聞いても結局カレーの話で返す。熱燗を何本も空け、締めのカレー南蛮を食べ終わるまで、ずっとなんだか恥ずかしい気持ちを抱えていた。
「curry rice」のニットを着てカレー南蛮をすするなんて。
会計して店を出よう席を立ったとき、向かいに座っていた友達ふたりが同時に口を開いた。
「そのニット、かわいいね!」
嬉しいような恥ずかしいような。でも、なんだかその一言で、1日が報われた気がした。


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